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// 72kgで撮るオーロラ · 2005-031B

れいめい
REIMEI (INDEX)

れいめいは次世代小型衛星技術を軌道実証し、多波長オーロラ画像と粒子を同時観測することを目的に設計された小型技術・オーロラミッションである。薄膜反射板を使う集光型太陽電池パドル、超小型GPS、光ファイバージャイロなどを実証しながら、MACと粒子分析器で科学成果も得た。 成果だけでなく、設計判断と異常時の選択までを追うと、日本の宇宙開発が一機ごとの経験を次へ渡してきた道筋が見える。

72
公式代表質量(kg)
654
代表軌道高度(km)
97
軌道周期(分)
運用終了🇯🇵 ISAS/JAXA小型技術・オーロラ

01基本情報

運用史と機体仕様を、ミッションの読み解きに必要な単位で整理する。

打上げ日2005-08-24現地表記は一次資料に準拠
国際標識番号2005-031BCOSPAR ID
打上げ機DneprロケットDnepr
射場バイコヌール宇宙基地カザフスタン
質量72 kg打上げ時または公式代表値
近地点610 km公式公称値
遠地点654 km公式公称値
軌道傾斜角97.8°赤道面基準
軌道周期97分公称値
姿勢制御バイアスモーメンタム三軸制御観測・通信の基準
外形約62×62×72 cm展開物を除く場合あり
運用状態終了(公式ページで運用終了分類)公式機関の分類

02ミッション

次世代小型衛星技術を軌道実証し、多波長オーロラ画像と粒子を同時観測するという目標を、高度610〜654 km、傾斜角97.8度の極軌道で、南北のオーロラ帯を毎周回横切った。という軌道・運用条件の中で実現した。72 kgの機体では電力、姿勢、データ量に大きな余裕がなく、技術実証と科学観測が同じ資源を奪い合うため、周回ごとに優先順位を切り替えた。

問いを機体へ変える

れいめいの出発点は、次世代小型衛星技術を軌道実証し、多波長オーロラ画像と粒子を同時観測するという、地上観測や短時間のロケット実験だけでは解けない問いだった。大型衛星の余剰打上げ能力を使い、若手が短期間・低コストで科学と工学を一体開発するモデルだった。 そこで計画は、観測器だけを宇宙へ運ぶのではなく、姿勢、時刻、電力、通信、較正を一つの測定系として成立させることを目標に置いた。衛星の価値は取得した信号の量ではなく、その信号がどの場所・条件で得られ、地上の研究者が再検証できるかで決まる。この考え方が機体構成、運用手順、データ公開までを貫き、れいめいを同時代の一回限りの実験から、後続計画が参照できる宇宙システムへ変えた。

軌道が決めた観測の文法

高度610〜654 km、傾斜角97.8度の極軌道で、南北のオーロラ帯を毎周回横切った。 軌道は単なる所在地ではない。高度と傾斜角は観測対象を通過する頻度、日照と食、地上局との可視時間、放射線量を同時に決める。運用チームは一周ごとの電力収支とデータ量を読み、観測時間、姿勢変更、記録、送信を割り付けた。制約の多い周回を繰り返せる手順に変換したことが、単発の成功より重要だった。れいめいの成果を読む際には、画像やスペクトルだけでなく、それを可能にした軌道上の待ち時間、較正観測、通信窓まで含めて一つの観測として捉える必要がある。

計画を変えた転機

薄膜反射板を使う集光型太陽電池パドル、超小型GPS、光ファイバージャイロなどを実証しながら、MACと粒子分析器で科学成果も得た。 この出来事は、当初計画を守ることより、残った能力で科学・技術目標を再構成する判断が重要であることを示した。地上側は状態量を照合し、仮説ごとに安全な確認手順を作り、観測側は欠測や性能変化を解析条件へ明記した。転機の後に得られたデータは、平常時の性能表だけでは説明できない運用知を含む。成功した機能と失われた機能を切り分け、優先順位を更新した過程そのものが、後続衛星の故障検知、冗長設計、運用規則に受け継がれた。

失敗と限界を記録する

72 kgの機体では電力、姿勢、データ量に大きな余裕がなく、技術実証と科学観測が同じ資源を奪い合うため、周回ごとに優先順位を切り替えた。 ここで重要なのは、結果を成功か失敗かの二語に畳まないことだ。原因が機器、電源、姿勢、推進、環境、運用のどこにあり、どの観測値がなお使えるかを分けて記録して初めて、次の設計判断へ接続できる。れいめいでは、異常の前後でテレメトリと地上設備の記録を突き合わせ、運用可能な範囲を見極めた。到達できなかった目標も、想定が足りなかった境界条件を具体化したという意味で技術成果である。アーカイブでは華やかな成果と同じ重さでこの限界を置く。

データが残した発見

三色オーロラ画像と電子・イオンの同時観測により、微細なオーロラ構造と降下粒子の対応を捉え、小型衛星の科学能力を示した。 観測の意味は、衛星単独の値ではなく、地上観測、他衛星、理論モデルと同じ時間軸へ置いたときに大きくなる。チームは較正値、姿勢情報、観測条件を合わせて解析し、個々のイベントから統計的な傾向へ議論を進めた。れいめいが作ったデータ系列は、後年の再解析で新しい較正法やモデルを試す土台にもなった。ミッション終了は知識生産の終了ではなく、安定したデータ形式と一次資料が次の研究者へ渡る節目なのである。

後継機へ渡したもの

SPRINT小型標準バス、若手主導の短期開発、工学実証と科学の相乗りを、ひさき、あらせ周辺の小型計画へつないだ。 継承されたのは部品の設計図だけではない。異常時にどの情報を先に確保するか、国際チームで時刻と較正をどう合わせるか、利用者へ品質情報をどう伝えるかという運用の作法も含まれる。後継機の性能向上は、れいめいの不足を隠すのではなく、観測できなかった領域や壊れやすかった経路を要件へ書き直すことで生まれた。したがって本機は、完成した答えというより、次の衛星がより鋭い問いを立てるための基準点として評価すべきミッションである。

  1. 2005年・打上げ前
    最終設計と射場準備
    62 cm級の箱形バスへ高精度三軸制御、集光型パドル、三色カメラ、電子・イオン分析器を高密度実装した。という構成を確定し、機体と地上系を一つの運用手順として検証した。
  2. 2005-08-24
    打上げ
    Dneprロケットでバイコヌール宇宙基地から打ち上げられた。
  3. 2005-08-24
    軌道投入・初期捕捉
    2005-031Bとして追跡され、電源、通信、姿勢の初期確認へ移った。
  4. 初期運用期
    観測系の立上げ
    展開物、搭載機器、較正と地上処理を順に確認し、定常運用の観測手順を作った。
  5. 2006年・科学観測本格化
    ミッションの転機
    薄膜反射板を使う集光型太陽電池パドル、超小型GPS、光ファイバージャイロなどを実証しながら、MACと粒子分析器で科学成果も得た。
  6. 公式ページで運用終了分類
    運用の終点
    三色オーロラ画像と電子・イオンの同時観測により、微細なオーロラ構造と降下粒子の対応を捉え、小型衛星の科学能力を示した。 運用終了後もデータと設計教訓が利用されている。

03エピソード

光と粒子を同時に重ねた観測と、二十年目の終端判断を一次資料から読む。

同じオーロラの光と粒子を、72 kgの一機で重ねる

2005年8月24日に打ち上げられたれいめいは、多波長Aurora Cameraと電子・イオン分析器を72 kgの機体へ同居させた。地上から見える発光だけでは、どのエネルギーの降下粒子が細い発光層を作ったかを同じ場所・時刻で結びにくい。ISAS/JAXAは三軸姿勢制御でオーロラ帯を指向し、画像と粒子分布を同時取得する運用を選んだ。その結果、降下粒子と対応する発光層を高い時間・空間分解能で同時に捉え、微細なオーロラ生成過程を一つの観測系列として比較できるようにした。

二十年目の電源故障で、観測機を安全に沈黙させる

れいめいは当初の小型技術実証を越えて約20年運用されたが、2025年7月に電源系機能の故障で観測継続が困難になった。回復不能な機体を不用意に送信させ続ければ、限られた地上運用資源と周波数を占有するため、ISAS/JAXAは状態を評価したうえで2026年3月4日に停波作業を実施し、運用終了を公表した。新技術を載せた72 kg級衛星を壊れるまで使い切るだけでなく、故障後に通信を明示的に止める終端判断まで完結させ、長期の工学・オーロラdataを後続小型衛星へ渡した。

04軌道

高度610〜654 km、傾斜角97.8度の極軌道で、南北のオーロラ帯を毎周回横切った。

れいめい / 軌道・航路概念図 地球 距離・天体サイズは経路理解のため模式化
  1. 01投入Dneprロケットから分離し、地上局が初期捕捉する。
  2. 02確立姿勢と電力を安定させ、軌道要素を確定する。
  3. 03定常観測、記録、送信を軌道周期に合わせて反復する。
  4. 04後期運用終了後は追跡・データ保存へ重点が移る。
主航路・運用軌道探査機マーカー概念図。正確な軌道要素は基本情報と出典を参照。

05搭載機器

観測目的を、実際に信号へ変えた機器群。

MAC

多波長オーロラカメラ

三つの波長で微細なオーロラ発光を撮像。

ESA

電子スペクトル分析器

降下電子のエネルギー分布を測定。

ISA

イオンスペクトル分析器

オーロラ域イオンのエネルギー分布を測定。

FOG

三軸光ファイバージャイロ

小型機の高精度姿勢推定を実証。

06設計 — 62 cm級バスに工学実証とオーロラ観測を同居

約62 × 62 × 72 cmの箱形バスに、薄膜反射器を使う集光パドル、三眼MAC、電子・イオン分析器を配置。地球側の発光と同じ磁力線上の降下粒子を同時に測れる向きへ揃えた。

れいめいの外形と観測器配置箱形小型衛星、集光太陽電池パドル、MAC三眼、ESAとISA、姿勢センサーを示す。REIMEI / INDEX EARTH-POINTING LAYOUT約62 × 62 × 72 cm・72 kg バイアスモーメンタム三軸姿勢制御薄膜反射器つき集光パドル反射板で小面積セルへ光を集める小型三軸バスRW+MTQ、FOG、GAS、STTを統合MAC 三波長カメラ427.8 / 557.7 / 670 nmを同時撮像ESA / ISA トップハット分析器電子・イオンをMACと同じ磁力線でSTT / FOG / GAS光学・慣性・地磁気を比較して姿勢を閉ループ化発光像と降下粒子を同じ磁力線上で同時計測

小さな機体で「画像」と「粒子」を同期する

MACの三つのCCDは異なる発光線を同時撮像し、ESA/ISAは同じ磁力線に沿って降る電子とイオンのエネルギー分布を測る。FOG、GAS、STTと反応ホイール/磁気トルカが視線を維持し、工学実証がそのまま科学観測の精度を支える構成である。

08関連文献

設計と成果を検証できる論文・公式技術資料。

  • れいめい 公式ミッションページ
    ISAS/JAXA・機体諸元、運用、成果 · 一次資料
  • Dnepr 公式打上げ機資料
    JAXA/ISAS・打上げシステムと記録 · 一次資料
  • 2005-031B spacecraft record
    NASA NSSDCA・国際標識番号と軌道記録 · 一次資料