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// 雲を透かすLバンドと7波長の立体視 · 1992-007A

ふよう1号
FUYO-1 / JERS-1

ふよう1号は、雲や夜を越えて地表を捉えるLバンドSARと、可視から短波赤外までを測るOPSを同じ衛星に載せた日本初期の本格的な陸域観測機である。高度568 kmの太陽同期準回帰軌道を96分で巡り、44日ごとに同じ地上軌跡へ戻る。設計寿命2年を超えて6年以上集めた帯状画像は、資源探査だけでなく全球の森林変化を読む長期記録になった。

44
地上軌跡の回帰日数
75
SAR / OPS 観測幅 km
6+
観測を続けた年数
1998年 運用終了🇯🇵 NASDA/通商産業省LバンドSAR+光学立体視

01基本情報

一枚の画像ではなく、同じ幾何を繰り返せる軌道と二種類の観測器がミッションを形づくった。

打上げ1992-02-11種子島宇宙センター/H-Iロケット
国際標識番号1992-007AJERS-1、愛称「ふよう1号」
打上げ時質量約1,340 kgJAXA公式代表値
軌道高度568 km太陽同期・準回帰軌道
軌道傾斜角97.7°公称値
周期約96分一日あたり約15周
回帰周期44日同じ地上軌跡へ戻る周期
降交点地方時10:30〜11:00照明条件をそろえる
姿勢方式三軸・ゼロモーメンタムSARとOPSの観測幾何を保持
機体外形約1×1.8×3.1 mSAR約12×2.5 m/太陽電池パドル約8×3.4 m
設計寿命2年実運用は6年以上
運用終了1998-10-12故障により観測運用を終了

02ミッション

レーダーと光学を競わせるのではなく、同じ地表を別の物理量で読み、44日回帰で時間変化へ変える設計だった。

二つの眼を、同じ軌道へ

SARは自らLバンドの電波を送り、地表から戻る強さと位相を測る。OPSは太陽光の反射を可視・近赤外・短波赤外の7波長帯で分ける。前者は夜や雲に強く、森林構造・水面・地形変化を捉え、後者は植生や鉱物の分光情報を与える。二つの観測器は並列の系として同じ姿勢・時刻・位置情報を共有し、同じ地域を補完的に比較できた。

96分の周回を、44日の物差しへ

高度568 km、傾斜角97.7°の太陽同期軌道では、衛星はほぼ南北に地表を横切る。降交点地方時を10時30分から11時にそろえ、44日後に同じ地上軌跡へ戻るため、OPSは近い太陽高度で比較でき、SARは同じ観測幾何を繰り返しやすい。軌道は単なる移動経路ではなく、季節差や災害前後を比較可能なデータへ変える測定器の一部だった。

SARは横を、OPSは直下と前方を見る

SARは進行方向に対して側方35°を見込み、約75 km幅を18×24 m級で撮像する。OPSも約75 km幅を観測し、直下視の波長帯に加えて近赤外の1帯を15.3°前方へ向けた。直下像と前方像の視差から地形を立体的に読めるため、同じ「光学センサー」でも色を測る役割と高さを測る役割が分かれていた。

一周の中で、観測・記録・送信を分ける

大きなSARアンテナを常時送信させるのではなく、地上の観測計画に合わせて電力を確保し、取得データをミッションデータレコーダへ記録した。レコーダは30 Mbpsを2系統、約20分保存でき、8 GHz帯のミッションデータ送信系が地上局へ渡した。観測器から地上局までが一続きの測定系だが、SARとOPSの信号処理経路はレコーダへ入るまで独立している。

資源衛星から、森林の年代記へ

打上げ時の中心課題は国土・農林水産・資源・環境・防災・沿岸監視だった。ところが長期運用で蓄積したLバンドSARは、雲の多い熱帯を含む広域森林モザイクに力を発揮した。東南アジア、アマゾン、アフリカ、北方林を横断する記録は、JERS-1からALOS/PALSAR、ALOS-2、ALOS-4へ続く日本のLバンド観測系列の出発点になった。

  1. 1992-02-11
    H-Iで軌道へ
    種子島から打ち上げ、高度568 kmの太陽同期準回帰軌道で初期運用を開始。
  2. 初期運用
    二つの大型展開物を成立させる
    約12 mのSARアンテナと約8 mの太陽電池パドルを展開し、三軸地球指向を確立。
  3. 定常観測
    SARとOPSを独立運用
    天候・昼夜に強いレーダーと、7波長帯・前方視を持つ光学観測を地域ごとに計画。
  4. 44日ごと
    同じ地上軌跡へ回帰
    同じ観測幾何を積み重ね、土地被覆・森林・災害・地殻変動の比較材料を蓄積。
  5. 1992〜1998
    全球森林モザイクへ
    75 km幅の多数の帯状画像をつなぎ、熱帯・北方林をまたぐ広域記録を作成。
  6. 1998-10-12
    運用終了、データは継続
    故障により観測を終えた後も、SARモザイクとOPS画像は再解析・後継機比較に使われる。

03エピソード

LバンドSARを同じ季節と幾何で積み上げたことで、資源衛星は雲のない森林記録へ役割を広げた。

1,500枚を低水期に揃え、雲のないAmazonを一枚にする

Amazonでは雲が光学画像を遮り、河川と湿地は季節で大きく姿を変える。NASDAは1995年9〜11月の低水期にJERS-1のLバンドSARを同じ条件で集め、日本とAlaskaへ送った1,500枚以上をEORC、NASA ASF、JPLが処理した。単に最新画像を継ぎ足さず、一季の水位に揃えたため、広域を比較できる初の高解像度・雲なしモザイクになった。さらに1996年5〜7月の高水期像と比べ、冠水範囲を数量化できる基準を残した。

Amazon二季案を、赤道一周100 mの森林図へ広げる

設計寿命2年の資源探査衛星だったJERS-1は、軌道上検証後に利用可能時間が増えた。1994年、JPLがAmazonを乾季・雨季で揃える案を示すと、NASDAは対象を東南アジアやAfricaまで含む赤道帯へ拡張し、JRC、ERSDAC、各地の研究者とGlobal Rain Forest Mappingを組んだ。雲を透過し樹木構造へ応答するLバンドSARを100 mモザイクへ統一した結果、個別sceneの資源判読から、森林減少・炭素循環を大陸間で比較する記録へ任務の価値が変わった。

04軌道と観測シーケンス

一方向に周回し続ける衛星と、44日かけて地表を埋める観測帯を、別々の縮尺で読む。

軌道面|高度568 km・周期96分 降交点地方時 10:30〜11:00 地球 ほぼ極軌道 進行方向は連続 観測中も地球指向を保持 地表投影|観測帯の拡大 衛星直下の観測帯を地表座標で表示 1パス約75 km幅 44日で同じ地上軌跡へ 隣接する帯を積み重ねて全球化
  1. 01投入・展開H-Iから分離し、太陽電池パドルと約12 mのSARアンテナを展開。
  2. 02地球指向確立高度568 kmの太陽同期軌道でゼロモーメンタム三軸制御を確立。
  3. 0396分ごとの観測SARは側方35°、OPSは直下と15.3°前方を独立に観測。
  4. 0444日回帰同じ地上軌跡・近い地方時へ戻り、変化比較とモザイク化を進める。
  5. 05運用終了1998年10月12日に故障で観測を終え、取得済みデータの保存と利用へ移る。
太陽同期準回帰軌道ふよう1号地表観測帯

05観測器

SARとOPSは独立した二本の観測系。OPS内部でも、分光と立体視で視線の役割が分かれている。

SAR

Lバンド合成開口レーダー

1,275 MHz、オフナディア35°、観測幅約75 km。昼夜・雲に左右されにくく、森林・水面・地形変化を撮像する。

VNIR

可視・近赤外チャンネル

0.52〜0.86 µmの3帯で植生や土地被覆を測る。直下視画像が比較の基準になる。

SWIR

短波赤外チャンネル

1.61〜2.40 µmの4帯。鉱物や岩石の反射特性を波長ごとに区別する。

STEREO

15.3°前方視

0.76〜0.86 µmの1帯を前方へ向け、直下視画像との視差から地形の立体情報を得る。

06設計

約12 mのレーダー、約8 mの太陽電池パドル、地球を見るOPS。大型展開物を左右へ分け、信号経路は内部で並列に保った。

展開時の外形と観測方向 SAR アンテナ 約12 × 2.5 m 衛星バス 1 × 1.8 × 3.1 m OPS 直下視 15.3°前方視 太陽電池パドル 約8 × 3.4 m 機能のつながり 電力 太陽電池パドル 電力調整・配電共通バス 蓄電池 姿勢・軌道 姿勢センサー ゼロモーメンタム三軸制御 ホイール・磁気制御 1 N級スラスタ群 観測・記録・通信 SAR送受信信号処理 OPS望遠鏡信号処理 ミッションデータレコーダ 20分 8 GHz帯データ送信 地上局
電力姿勢・軌道制御観測記録・通信

左右へ分けた二つの大型展開物

衛星バスの片側に約12×2.5 mのSARアンテナ、反対側に約8×3.4 mの太陽電池パドルを配置した。レーダーの視野と太陽電池の採光を両立しながら、打上げ時には折り畳み、軌道上で干渉せず展開する必要がある。OPSは地球側へ置き、直下視と15.3°前方視の視線を機体構造から確保した。

SARとOPSは最後まで並列

SARの送受信・信号処理と、OPSの望遠鏡・検出器・信号処理は別系統である。双方がそれぞれミッションデータレコーダへデータを渡し、30 Mbpsを2系統で約20分記録する。8 GHz帯のミッションデータ送信系はレコーダの内容を地上へ送る。

ゼロモーメンタム三軸制御

SARのドップラー条件とOPSの画素位置を保つため、姿勢センサーの情報を三軸制御系が受け、ホイールと磁気制御で地球指向を維持する。軌道・姿勢変更には1 N級スラスタ群も使われる。観測器は姿勢系へ指令を渡すのではなく、衛星バスが決めた指向と時刻を共通の観測基準として利用する。

SARのピーク負荷を一周でならす

太陽電池パドルの電力は調整・配電系を介して共通バスと蓄電池へ入る。SAR送信、OPS観測、データ記録、地上送信は同じ電力資源を使うため、全機器を常時動かす設計ではない。観測計画は日照・食・地上局可視を重ね、ピーク負荷と記録容量を一周の中へ割り付けた。

衛星と地上で一つの観測装置

軌道上で得た信号だけでは地図にならない。レコーダから受信したデータへ軌道・姿勢・時刻情報を対応させ、SAR画像の幾何補正やOPSの波長別補正を行う。44日回帰の価値は、衛星側の反復だけでなく、地上側が同じ基準で処理版と較正情報を残すことで成立した。

08一次資料

軌道・機体・観測器・データ経路を、運用機関と機器メーカーの公開資料で照合する。

  • Japanese Earth Resources Satellite-1 “FUYO-1”
    JAXA・目的、質量、外形、姿勢方式、運用期間 · 公式資料
  • JERS-1 概要
    JAXA EORC・568 km、96分、44日回帰、OPS前方視、ミッションデータレコーダ · 公式資料
  • JERS-1 SAR
    JAXA EORC・1,275 MHz、35°、75 km、18×24 m · 公式資料
  • JERS-1 OPS
    JAXA EORC・VNIR、SWIR、立体視、波長帯 · 公式資料
  • JERS-1 OPS / Mission Data System
    Japan Space Systems・8 GHz帯送信、30 Mbps×2、20分記録 · 機器資料
  • 衛星推進系 納入実績
    IHIエアロスペース・JERS-1用1 Nスラスタ系 · メーカー資料