// 金星・ハレー彗星探査 · 1984-125A
ベガ1号
Vega 1
金星の雲へ気球、地表へ着陸機、そして母船はハレー彗星へ。一度の航路を三つの探査環境へ分岐させた。
01基本情報
母船、金星降下モジュール、気球は別々の飛行体。役割と到達地点を分けて示す。
| 開発・運用 | NPO Lavochkin / 国際科学チーム |
|---|---|
| 打ち上げ | 1984年12月15日 Baikonur |
| ロケット | Proton-K / Blok D |
| 国際標識 | 1984-125A |
| 打上げ時質量 | 約4,920 kg |
| 降下モジュール | 約1,500 kg / 1985年6月9日分離 |
|---|---|
| 金星母船通過 | 1985年6月11日 / 約39,000 km |
| 気球 | 高度約54 km / 46.5時間 |
| 着陸機 | 金星夜側へ着陸 / 地表から56分送信 |
| ハレー最接近 | 1986年3月6日 / 8,889 km |
02ミッション
「Venus」と「Gallei」の頭を取ったVeGa。金星用のVenera系機体を、ハレー彗星へ抜ける複合任務へ作り替えた。
金星へ渡す機体、金星を通過する機体
Vega 1は1985年6月9日、約1,500 kgの降下モジュールを母船から放出した。2日後、降下モジュールは金星大気へ入り、その内部から着陸機と気球の二系統が働く。一方の母船は金星を約39,000 kmで通過し、重力アシストを受けてハレー彗星へ向かった。
同じ大気を「縦」と「横」に測る
着陸機は夜側へ降下し、表面到達後も56分間送信した。土壌ドリルは降下中に早く作動したため地表試料の分析を完了できなかったが、質量分析計などはデータを返した。気球は高度約54 kmの雲層に浮かび、46.5時間で約11,500 kmを風に運ばれ、20局の電波干渉計網がその位置を追った。
金星通過後、機体の前面が変わる
ハレー接近では相対速度方向へ光学機器と塵・ガス検出器を向け、約5 m²の防塵シールドで重要機器を守った。TVSは広角系で核を捕捉し、狭角系で詳細を撮る二段構え。磁場・波動センサーは機体の電磁ノイズから離すためブームへ置かれた。
8,889 kmを三時間で通過
正式観測は3月4日、彗星から1,400万 kmで始まった。3月6日の約3時間の遭遇で最接近8,889 kmを通過し、異なるフィルターで500枚を超える画像と塵・ガス・プラズマデータを取得した。Vegaの画像は、後続するESAのGiottoが核へ狙いを定めるためにも使われた。
- 1984-12-15地球出発母船と金星降下モジュールを一体で打上げ。
- 1985-06-09降下モジュール分離約1,500 kgの金星機を、母船から先行させる。
- 1985-06-11金星大気へ着陸機は表面へ、気球は約54 kmの雲層へ分岐。
- 1985-06-11母船フライバイ約39,000 kmで通過し、ハレー航路へ。
- 1985-06-13気球通信終了46.5時間、約11,500 kmの雲層横断を記録。
- 1986-03-04ハレー本観測開始約1,400万 kmから追跡と撮像を開始。
- 1986-03-06ハレーフライバイ07:20:06 UT、核から8,889 kmを通過。
03開発・運用エピソード
数字だけでは見えない判断、危機、発見の瞬間を一次資料と結び直す。
54 kmの雲へ気球を置き、20局で見えない風を測る
Vega 1は1985年6月11日、金星降下機から超圧気球を高度約54 kmの雲層へ展開した。gondolaの温度・圧力・上下風だけでは惑星を回る東西速度を決めにくいため、CNES・Soviet・NASAは世界20のradio observatoryをVLBI網にし、弱い送信波の到来時刻差から三次元位置を追った。気球は約46時間で金星周長の約3分の1を漂い、telemetryの約95%を復号。単点の大気測定を、雲と一緒に流れる軌跡と風速へ変え、着陸機だけでは得られない中層大気の運動を直接測った。
金星で曲げた母船を、78 km/sの塵の中へ通す
金星で降下機と気球を放したVega 1母船は、1985年6月のgravity assist後も太陽周回を続け、1986年3月6日にHalley核から8,890 kmを相対約78 km/sで通過した。高速遭遇では一粒の塵でも機体を損ね、撮像方向も短時間で大きく変わるため、広角系で核を捕捉し狭角系へ渡すTVSと、塵・plasma・gas計を時刻順に動かした。複数の塵衝突を受けながら500枚超の画像を返し、核近傍を一瞬で横切る危険を、形状・位置・coma環境の同時測定へ変えた。
先に見た核位置をGiottoへ渡し、600 km接近の照準にする
Halleyの核は明るいcomaに埋もれ、地上観測だけでは1986年3月13日のGiottoを数百km級へ安全に導く位置精度が足りなかった。そこで国際探査隊は、6日に先行するVega 1と9日のVega 2をpathfinderにし、画像から核の形とcoma内の実位置を更新してESA teamへ渡した。Vega 1の500枚超を含む航法情報により、Giottoは最終照準を修正して核から600 km未満を通過し、初の近接核像を得た。一機の観測を完結させず、後続機の不確かな標的座標を減らす共同運用が成果を拡大した。
04軌道・遷移
Vega 1は金星到着前に降下機を分離し、着陸機と気球を大気へ届けた。母船は金星の重力で進路を変え、1986年3月6日にハレー彗星核から8,889 kmを高速通過した。
- 01地球出発1984-12-15 · 母船と金星降下モジュールを一体で打上げ。
- 02降下機を先行1985-06-09 · 約1,500 kgのモジュールを分離。
- 03気球・着陸機へ分岐1985-06-11 · 雲層を横へ、表面へ縦に観測。
- 04金星フライバイ母船は約39,000 kmで通過し、ハレー航路へ。
- 05ハレー追跡開始1986-03-04 · 1,400万 kmから本観測。
- 06核の脇を通過1986-03-06 · 8,889 km、07:20:06 UT。
- 07太陽周回へ遭遇後も反転せず、約281日周期の太陽周回軌道へ。
05主要機器・サブシステム
金星側は独立電源で地球へ直接送信し、母船側はハレー遭遇に合わせて速度方向へセンサーを並べた。
金星気球・ゴンドラ
圧力、温度、鉛直風、雲粒子、光、雷を測定。約54 kmを46.5時間漂流した。
金星着陸機
降下中の大気と表面を測定。地表到達後も56分間、地球へ直接送信した。
二望遠鏡テレビ系
広角望遠鏡で核を捕捉・追跡し、狭角望遠鏡で高解像度の多波長画像を取得。
赤外・三チャンネル分光
コマのガスと塵のスペクトルを測り、核近傍物質の組成を調べた。
塵質量分析計
高速衝突で生じるイオンを質量分析し、彗星塵粒子の元素・分子情報を得た。
塵粒子検出器
コマ内の粒子数と質量分布を飛行経路に沿って計数した。
磁力計
ブーム先端で磁場を測定し、彗星と太陽風の相互作用を追った。
波動・プラズマ分析
プラズマ波と荷電粒子エネルギーを測り、コマの境界構造を記録した。
06内部設計・システム構成
打上げ時はVenera系母船に金星降下モジュールを載せ、分離後は防塵シールドを前にした彗星フライバイ機へ役割を変える。
金星で上段を切り離す
Venera系母船の上側インターフェースに降下モジュールを搭載し、金星到着前に分離した。気球と着陸機はその後、母船から独立して地球へ送信する。
彗星側を「前」に作り替える
降下モジュールを失った母船は、相対速度方向へTVS、PUMA、SP-1/2などを向けるハレー探査機になる。光学系は自動指向台、塵・ガス検出器は飛行方向を基準に配置された。
防塵と視野の両立
約5 m²のシールドが重要機器を塵衝突から守る一方、カメラと粒子検出器には前方視野が必要だった。守る面と測る面を同じ相対速度軸上で成立させることが設計の核心だった。
ノイズ源から離すセンサー
MISCHA磁力計やAPV波動計はブームへ出し、バスの電磁ノイズから距離を取った。太陽電池、記録系、高利得アンテナ、姿勢制御は母船に残り、三時間の遭遇データを地球へ戻した。
07写真・図版
出典とライセンスを画像ごとに記載。機体・運用・成果を異なる視点から確認する。


08一次資料・技術文献
分離時刻、気球データ、彗星機器と最接近記録へ直接戻れる資料。