// 十二年の全天候レーダー監視を終えたCopernicus先駆機 · 2014-016A
Sentinel-1A
Copernicus Sentinel-1A
Sentinel-1AはC帯SARで昼夜・雲を問わず陸、海、氷、災害を撮像し、Copernicusの自由・完全・オープンなデータ政策を定着させた。2026年6月29日、12年の運用を公式に終えた。
01基本情報
運用史と機体仕様を、ミッションの読み解きに必要な単位で整理する。
| 打上げ日 | 2014-04-03UTC基準の日付 |
|---|---|
| COSPAR ID | 2014-016A国際標識番号 |
| 打上げ機 | Soyuz-ST-A / Fregat-Mミッション投入に使用 |
| 射場 | Guiana Space Centre ELS打上げ地点 |
| 打上げ質量 | 945 kg公式公表値または代表値 |
| 軌道 | 高度約693 kmの太陽同期軌道12日反復、2機体制で6日を実現 |
| 公転・周回周期 | 約98.6分1日約14.6周 |
|---|---|
| 軌道傾斜角 | 98.18°極域を含む全球SAR |
| 設計寿命 | 7年12年運用 |
| 運用状態 | 運用終了2026年6月29日にoperational duties終了 |
| 主目的 | 全天候C帯SARによる陸海氷・災害・地殻変動の継続運用観測一次資料に基づく要約 |
| データ・通信 | C-SAR、X帯高速downlink、S帯TT&C、Copernicus Data Space原則無償・オープンで世界配布 |
02ミッション
単発の研究画像ではなく、同じ観測モードを大陸規模で計画し、干渉解析できる時系列を運用サービスとして提供した。
目的を測定へ
この段階の核心は、全天候C帯SARによる陸海氷・災害・地殻変動の継続運用観測を「一度だけ成功させる実験」ではなく、検証可能な観測・運用手順へ変換したことにある。Interferometric Wide SwathはTOPS走査で約250 km幅と約5×20 m級分解能を両立し、陸域標準モードとなった。ここで重要なのは結果だけではない。姿勢、時刻、軌道、校正、通信状態を同時に記録し、地上側が別の観測や計算と突き合わせられる形にしたため、後続計画は成功条件と失敗条件の双方を具体的に学べた。
初期運用
Sentinel-1Aが切り開いたのは、単純な性能競争ではなく、測定系全体の信頼性を設計する考え方だった。二時期のSAR位相差InSARで地震、火山、地盤沈下、氷河流動のセンチメートル級変位を測った。得られたデータは装置固有の癖や軌道による偏りを含むため、運用班と解析班は較正履歴を残し、観測できなかった領域まで明示した。その慎重さが、短い運用期間の成果も長期記録へ接続できる理由になった。
転機への対応
転機は、計画書どおりに進まない状況で優先順位を組み替えた点にある。Extra-Wide SwathやWave modeで海氷、油流出、船舶、波浪など海洋サービスを支えた。限られた電力、推進剤、通信時間、熱余裕のどれを守るかは科学価値と機体寿命の交換条件だった。チームは安全側に倒すだけでなく、どの測定を残せば目的の中核を保てるかを判断し、運用変更そのものを次世代の設計資料にした。
成果の確定
全天候C帯SARによる陸海氷・災害・地殻変動の継続運用観測という目標は、単独のセンサーだけでは成立しない。データを自由・完全・オープンに提供し、緊急災害対応と民間利用を研究者以外へ広げた。軌道決定、姿勢推定、時刻同期、地上局、処理ソフト、公開アーカイブが一つの測定器として働いて初めて、数値に物理的な意味が生まれる。Sentinel-1Aは、この連鎖のどこか一つが弱ければ全体の精度が失われることを、成果とトラブルの両方で示した。
記録の継承
科学的な価値は、最初の発見だけで決まらなかった。Sentinel-1B故障後も1Aが基幹観測を担い、2024年の1C、2025年の1Dへ系列をつないだ。同じ条件で繰り返した観測、別装置との比較、後年の再処理によって、当初は背景雑音に見えた信号にも新しい意味が与えられた。一次データと校正情報を保存した判断は、計画終了後も研究を更新できる「時間を越える観測装置」を残した。
次世代への遺産
Sentinel-1Aの遺産は、成功を神話化することではなく、制約を公開可能な知識へ変えた点にある。ESAは2026年6月29日に1Aのoperational duties終了を確認し、最後の画像として西アイスランドとMelbourneを公表した。達成できた項目、断念した項目、故障後に残った能力を分けて記録することで、後継機は単なる大型化を避け、必要な冗長性、観測帯域、軌道、運用自動化を選び直せた。現在の標準的な手法の多くは、この具体的な試行錯誤の上にある。
- 2005Sentinel-1要求確定ERS/Envisat SARを運用Copernicusへ継承。
- 2014-04-031A打上げSoyuz-STで太陽同期軌道へ。
- 2014-10運用データ提供陸・海・氷の定常SAR観測を開始。
- 2016-041B参加二機で6日repeatの干渉観測を確立。
- 2021-121B異常1Bの電源系故障後、1Aが系列を単独で支える。
- 2024-121C打上げ後継機が観測能力を回復。
- 2025-111D打上げ新世代二機体制を形成。
- 2026-06-29運用終了ESA Operations Centreが1Aの任務終了を確認。
- 2026-06-30最後の画像公開西アイスランドとMelbourneのSAR像を公表。
03エピソード
数字だけでは見えない判断、危機、発見の瞬間を一次資料と結び直す。
初年83,000製品を開き、地震変位を研究室の外へ出す
2014年4月3日にSentinel-1Aが打ち上がると、ESAとEUはC-band SAR画像を少数の専門契約へ閉じず、Copernicusのopen accessで無償公開した。雲や夜に妨げられない一方、位相dataは処理が難しいため、toolboxと定常観測計画も同時に提供した。2015年4月までに約83,000製品、680 TB相当がonlineとなり、登録6,000人超・download 50万件に達した。その結果、Napa Valley地震、火山、Greenland氷床を同じ12日repeatで比較でき、衛星性能だけでなく配布判断が災害・研究利用の速度を変えた。
数mmの粒子痕を、役目を終えた展開cameraで確かめる
2016年8月23日、Sentinel-1Aはsolar arrayの発電低下と姿勢・軌道の小さな変化を同時に記録した。地上追跡で避けられる物体は通常5 cm超で、数mm級衝突体は見えないため、telemetryだけでは自然物かdebrisか、どこを損傷したか決めにくい。ESAは2014年のarray展開確認後に使う予定のなかった機上cameraを再起動し、裏面から約40 cmの痕を撮影した。発電低下はroutine運用余裕内と確認でき、観測を停止せず継続。使い終えた診断器を残した設計が、追跡不能粒子のimpactを実像で切り分けた。
2026年6月29日、後継三機の間で十二年を閉じる
設計寿命7年のSentinel-1Aは12年働いたが、ESAは単独で限界まで延命するより、2024年の1Cと2025年の1Dへ連続記録を渡す終え方を選んだ。2026年6月29日の運用終了前、管制チームは複雑な軌道機動で1A・1C・1Dを三機configurationへ整え、最後に西IcelandとMelbourneのSAR像を取得した。翌30日にESAが引退を公表し、million単位の画像をarchiveへ残した。観測空白を作らず後継配置まで済ませたため、旧機の終端がCopernicus radar監視の中断にならなかった。
04軌道
夜明け側太陽同期軌道を12日で反復し、同じ視線幾何を守ることで、位相差から地表変位を測れる時系列を作った。
- 0112日repeat1A単独で同じ地上軌跡と視線を12日ごとに再訪。
- 02TOPS走査広いswathを電子走査し位相連続なburstを取得。
- 03二機干渉1Bとの180°配置で6日repeatを形成。
- 04世代交代1C・1D配置を整え2026年に運用終了。
05搭載機器
観測目的を、実際に信号へ変えた機器群。
C-band Synthetic Aperture Radar
5.405 GHzで全天候・昼夜の地表後方散乱を観測。
Terrain Observation with Progressive Scans
広幅と干渉品質を両立する電子走査モード。
Dual-frequency GNSS Receiver
精密軌道決定と画像地理登録を支援。
Star Tracker Assembly
SARビーム指向に必要な姿勢を決定。
Laser Retroreflector
衛星レーザー測距で軌道を検証。
06設計 — 12 m平面SARと10 m翼2枚
中央のPRIMAバスから、左右に太陽電池翼、地球側に横長のCバンドSARを展開。レーダー面の大きさが機体外形を決めている。
観測器が「箱」ではなく、機体の横幅そのもの
Sentinel-1Aでは、12.3 mのC-SAR平面アンテナが衛星バスよりはるかに大きい。分割パネルを軌道上で展開し、面内の送受信モジュールでビーム方向を電子的に変えるため、機械的な首振りなしで複数の観測幅を使い分けられる。2枚の10 m太陽電池翼とSARは干渉を避ける固有の順序で約10時間かけて展開された。
07写真・図版
実機と観測成果を、出典・ライセンスとともに確認する。


08関連文献
設計と成果を検証できる論文・公式技術資料。
- Sentinel-1A ミッション概要
- Sentinel-1A 宇宙機カタログ
- Sentinel-1A 技術・運用資料