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// レーダ地球観測 · 1995-059A

RADARSAT-1
RADARSAT-1

一つのC帯SARで入射角と幅を切り替え、氷海・洪水・農地・地形を目的別モードで観測した。

8mode
SAR観測モード
10m級
最高分解能
500km
最大観測幅
運用終了🌐 カナダ / Canadian Space Agencyレーダ地球観測

01基本情報

打ち上げ、機体、軌道、運用の主要諸元。数値だけでなく任務上の役割を併記する。

開発・運用カナダ Canadian Space Agency
打ち上げ1995年11月04日 Vandenberg
ロケットDelta II 7920
国際標識1995-059A
状態運用終了
質量約2,750 kg
軌道・航路高度約798 km太陽同期
電源太陽電池・約2.5 kW
設計形式radar-observer
主要目標可変ビームC帯SAR地球観測

02ミッション

可変ビームC帯SAR地球観測を、要求・機体・軌道・運用判断・遺産の五層から読む。

何を変えるための飛行だったか

広大なカナダと全球を全天候で監視し、氷海航行・災害・資源管理へ適した画像を提供することが目的だった。 RADARSAT-1を理解する出発点は、打ち上げ年や機体サイズではなく、当時まだ測れなかった量、成立していなかった運用、あるいは越えられていなかった距離を特定することにある。中心課題は「可変ビームC帯SAR地球観測」。その要求は観測装置だけで完結せず、軌道、電力、通信、熱、地上系を同時に縛った。

代表値の8 mode(SAR観測モード)、10 m級(最高分解能)、500 km(最大観測幅)は、単なる記録ではない。どの局面へ設計余裕を配分したかを示す手掛かりである。一つのC帯SARで入射角と幅を切り替え、氷海・洪水・農地・地形を目的別モードで観測した。 本ページでは成果だけでなく、その成果を可能にした判断の連鎖まで追う。

要求を機体へ落とし込む

15 m×1.5 mのSARアンテナを展開し、電子ビーム操向でFineからScanSARまで複数モードを作った。 機体は約2,750 kg、電源は太陽電池・約2.5 kW。主要構成のSAR(C帯合成開口レーダ)、ANT(展開フェーズドアレイ)、SCAN(ScanSAR処理)は独立した部品ではなく、観測または運用の要求をデータへ変え、保存し、地上へ渡す一本の経路を作る。SSR(固体記録器)はその途中で姿勢・環境・相対位置の条件を整える。

さらにACS(姿勢制御系)とEPS(高出力電力系)を組み合わせることで、一つの故障がただちに全任務へ波及しないよう機能を分担した。重量や消費電力を増やせば安全になるとは限らず、打上げ能力、放熱面積、指向精度、通信時間との交換になる。RADARSAT-1の設計は、限られた資源を任務の決定的瞬間へ集中させた結果として読むべきである。

軌道は移動経路ではなく実験装置

観測要求ごとに入射角・分解能・観測幅を選び、地上局へ直接または記録再生した。 地球周回では高度だけでなく、軌道傾斜角、昇交点の向き、地方時、地上局可視時間が観測と通信を決める。投入後は姿勢確立、太陽電池展開、初期捕捉、軌道補正を順に行い、定常運用の地上軌跡へ収束させる。図では地球自転と衛星公転を別周期で動かし、同じ地点の上に静止しているように見えない実際の関係を表した。

打上げにはDelta II 7920を使い、Vandenbergから高度約798 km太陽同期へ入った。1995の「SAR運用開始」から2013の「運用終了」まで、軌道変更は観測の前準備ではなくミッションそのものだった。下のアニメーションでは、主要天体の運動、遷移航路、目的地近傍の運用を意図的に別速度で示している。

運用現場で何を判断したか

大型アンテナの姿勢外乱と高ピーク電力を、観測時間割・リアクションホイール・電池で管理した。 実際の運用では、取得したテレメトリを正常・異常の二値に分けるだけでは足りない。姿勢誤差、電池残量、温度、通信余裕、推進剤、次の可視時間を並べ、今すぐ続行する価値と安全側へ戻る価値を比較する。自動シーケンスは通信遅延を埋める一方、誤った前提のまま進む危険も持つため、停止条件と地上復帰点が設計された。

全球的氷床レーダモザイクを取得。 この一局面を成立させたのは、個別装置の性能より、時刻基準と状態遷移を全系で共有したことだった。観測機なら較正と指向、通信衛星なら回線と姿勢、有人機なら生命維持と退避経路、探査機なら自律航法とセーフモードが判断軸になる。RADARSAT-1の運用史は、設計図では見えない余裕の使い方を記録している。

残ったデータと設計遺産

南極全土のレーダモザイクを完成し、可変モード商用SARの運用標準を作った。 成果は発表時の新規性だけでなく、後年の再解析、後継機との比較、規格や訓練の変更に耐えるかで価値が決まる。RADARSAT-1が残したものは、観測値、運用ログ、軌道決定値、故障時の判断、製作試験の記録を結び付けた参照系である。

後継計画は同じ機体を再現するのではなく、SAR(C帯合成開口レーダ)で得た能力を更新し、ACS(姿勢制御系)で見えた制約を別の技術で解く。成功した任務も、終了・失敗した任務も、どの前提が正しくどの余裕が不足したかを具体化した点で次の設計に効く。一次資料とアーカイブを併記したのは、物語だけでなく検証可能な記録へ戻れるようにするためである。

Canadian Space Agency — RADARSAT-1、NASA Technical Reports Server、NASA Earthdata Searchを突き合わせると、1995年11月04日の打上げから2013の「運用終了」までが、単なる出来事の列ではなく、要求、実装、軌道上判断、成果公開の因果関係として読める。本文では確定した事実と後年の評価を混同せず、数値には対象と条件を添えた。図も同じ原則で、距離や天体寸法を実寸比例にはせず、可変ビームC帯SAR地球観測に必要だった遷移、会合、観測区間の順序を優先している。したがってRADARSAT-1の価値は「飛んだか」だけではなく、どの設計仮説が実運用で支持され、どの不確かさが次の計画へ持ち越されたかまで追跡して初めて見えてくる。

  1. 開発期
    要求と方式の確定
    広大なカナダと全球を全天候で監視し、氷海航行・災害・資源管理へ適した画像を提供することが目的だった。
  2. 1995-11-04
    打上げ
    Delta II 7920で高度約798 km太陽同期へ投入。
  3. 1995-11-04
    初期機能確認
    C帯合成開口レーダと展開フェーズドアレイを立ち上げ、電力・熱・通信・姿勢の基準状態を確立。
  4. 1995
    SAR運用開始
    可変ビーム観測を開始。
  5. 1997
    南極マッピング
    全球的氷床レーダモザイクを取得。
  6. 2013
    運用終了
    17年以上の観測後に退役。
  7. 飛行後
    成果の継承
    南極全土のレーダモザイクを完成し、可変モード商用SARの運用標準を作った。

03開発・運用エピソード

南極で機体を反転した観測と、十七年目の停止判断を一次資料から読む。

衛星を180度返し、南極を反対側から一枚につなぐ

1997年9〜10月、Canadian Space Agency、NASA、Alaska SAR Facility、Ohio State Universityは、RADARSAT-1で南極全土の最初の高解像度radar mosaicを作った。しかし通常の右向きSARでは軌道から見える側に限界があり、極点周辺を埋められない。運用teamは機体をyaw方向へ180度回して左向きにし、雲、霧、極夜を透過するC-band SARで不足域を撮像した。姿勢を反転してもantennaの照準・電力・地上処理を保つ判断により、同年9月14日に南極点を初めて衛星radarで高解像度撮像し、継ぎ目のない大陸基準図へ結んだ。

五年設計を十七年使い、姿勢系の異常で観測を止める

RADARSAT-1は設計寿命5年に対し、氷海、洪水、農地、南極を17年以上撮り続けた。ところが2013年3月29日、Canadian Space Agencyは技術的異常を検出し、通常の制御とdata取得を回復できなくなった。長寿命だからと不確かな姿勢で高出力SARを再開せず、地上teamは復旧を試みた後、5月9日に衛星を運用不能と宣言した。予定を約12年超えた時点で観測量をさらに求めるより、指令できる範囲と回復可能性を区切った判断が、同一C-bandで蓄えた長期記録を明確な終点まで保った。

04軌道・遷移

地球周回では高度だけでなく、軌道傾斜角、昇交点の向き、地方時、地上局可視時間が観測と通信を決める。投入後は姿勢確立、太陽電池展開、初期捕捉、軌道補正を順に行い、定常運用の地上軌跡へ収束させる。図では地球自転と衛星公転を別周期で動かし、同じ地点の上に静止しているように見えない実際の関係を表した。

RADARSAT-1の軌道・遷移アニメーション 可変ビームC帯SAR地球観測に至る主要局面を模式化。距離と周期は読みやすさのため誇張。 RADARSAT-1 / MISSION TRAJECTORY 地球 RADARSAT-1 — 高度約798 km太陽同期 軌道形状は投影模式図。高楕円では地球を焦点に配置 天体サイズ・距離・時間は運用局面を見やすくするため模式化
  1. 01要求と方式の確定開発期 · 広大なカナダと全球を全天候で監視し、氷海航行・災害・資源管理へ適した画像を提供することが目的だった。
  2. 02打上げ1995-11-04 · Delta II 7920で高度約798 km太陽同期へ投入。
  3. 03初期機能確認1995-11-04 · C帯合成開口レーダと展開フェーズドアレイを立ち上げ、電力・熱・通信・姿勢の基準状態を確立。
  4. 04SAR運用開始1995 · 可変ビーム観測を開始。
  5. 05南極マッピング1997 · 全球的氷床レーダモザイクを取得。
  6. 06運用終了2013 · 17年以上の観測後に退役。
  7. 07成果の継承飛行後 · 南極全土のレーダモザイクを完成し、可変モード商用SARの運用標準を作った。

05主要機器・サブシステム

任務を実際に成立させた六つ以上の固有コンポーネント。

SAR

C帯合成開口レーダ

全天候地表撮像。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

ANT

展開フェーズドアレイ

電子的にビームを操向。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

SCAN

ScanSAR処理

広域を複数サブスワスで観測。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

SSR

固体記録器

高率レーダデータを蓄積。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

ACS

姿勢制御系

長いアンテナと視線を安定。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

EPS

高出力電力系

レーダ送信パルスへ電力供給。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

06内部設計・システム構成

15 mのC帯SARアンテナを主構造として、伸展支持機構、バス、2翼の太陽電池、通信・姿勢・推進系を実機の配置で読む。

RADARSAT-1の機体配置図上部に15メートル×1.5メートルのC帯SARフェーズドアレイ、その中央下に伸展支持構造、ペイロードモジュールとバス、左右に太陽電池翼、S帯およびX帯通信アンテナ、姿勢・推進系を配置した模式図。 RADARSAT-1 / PHYSICAL LAYOUT地球指向・右側観測 C-BAND SAR PHASED ARRAY15 m × 1.5 m 電子的にビーム方向を切替 伸展支持構造 ESS ペイロードモジュールSAR送受信・信号処理・記録バスモジュール電力・TT&C・姿勢制御・推進軌道維持用スラスター 太陽電池翼太陽電池翼 S帯 TT&CX帯データ送信 大型アンテナの平面度と指向を、伸展構造・三軸姿勢制御・推進系で維持

15 mのアンテナが機体の形を決める

C帯SARのフェーズドアレイは15 m × 1.5 mで、バスよりはるかに長い。打上げ時は折り畳み、軌道上で伸展支持構造ESSが平面度を保つ。電子的なビーム操向により、同じ右側観測でも入射角と観測幅を切り替えた。

レーダ面と発電面を分けて展開

大型SARの中央下にペイロードモジュールとバスを置き、その左右へ2.21 m × 1.32 mの太陽電池翼を展開する。レーダ送信に必要な電力を確保しながら、アンテナの地球視野と発電面の太陽指向を三軸姿勢制御で両立する。

観測データを地上へ渡す

バスには姿勢・軌道制御、推進、電力、通信機能を集める。S帯はテレメトリ・コマンド、X帯は高率の観測データ送信を受け持ち、地上局が見えない間のデータは機上記録器へ保持する。

08一次資料・技術文献

仕様、軌道、運用史、データへ戻るための代表的な入口。