// Exoplanet space telescope · NASA Ames / JPL · 2009-011A

ケプラー
KEPLER / K2

ケプラーは、星の明るさのわずかな落ち込みから惑星を見つけたNASA初の本格的な惑星狩り宇宙望遠鏡。夜空には星より多いほど惑星がある、という感覚を一般常識に近づけた。

150,000
主ミッションで見続けた星
2,600+
系外惑星発見の遺産
2018
退役
退役🇺🇸 NASA系外惑星探査

01基本情報

ひとつの広い星野を長期間見続け、惑星が恒星の前を横切るときの微小な減光を探した宇宙望遠鏡。

開発・運用NASA Ames Research Center / JPL
打上げ2009年3月6日 Delta II, Cape Canaveral
状態退役 2018年10月30日にNASAが退役を発表
主目的地球サイズの系外惑星を含む、銀河系内の惑星頻度を調べる
種類宇宙望遠鏡 / 高精度測光機
軌道太陽周回・地球追随軌道
観測方式トランジット法 恒星の減光を検出
国際標識番号2009-011A

02ミッション

ケプラーの強さは、望遠鏡をあちこちへ向けないことだった。ひとつの星野を静かに見続けることで、惑星の影を統計として集めた。

同じ星を見続ける

ケプラーは、はくちょう座方向の星の多い領域を主に観測し、NASAの説明では当初15万個の星を連続的に見続けた。惑星が恒星の前を通る確率は低く、周期を確かめるには複数回の通過が必要になる。だから、広い空を浅く巡るより、同じ場所を粘り強く測ることが合理的だった。

トランジット法の単純さと難しさ

惑星が恒星の前を横切ると、恒星の明るさはごくわずかに下がる。原理は単純だが、実際には恒星の活動、機器ノイズ、姿勢変動、背景天体を見分ける必要がある。ケプラーは巨大なデジタルカメラと安定した指向で、統計的な惑星探しを宇宙で成立させた。

惑星は珍しい例外ではなかった

NASAは、ケプラーの成果により夜空の恒星の20から50パーセントに、地球サイズに近く、ハビタブルゾーンにある可能性の惑星が存在しうるという分析を紹介している。すべてが地球のような世界という意味ではないが、惑星系が銀河の普通の構造であることを強く示した。

K2という第二の人生

2013年、姿勢制御に使うリアクションホイールの故障で、元の一点注視は難しくなった。そこでチームは太陽光圧を姿勢安定に利用し、黄道面沿いに観測領域を変えるK2ミッションへ転じた。故障後の運用設計が、望遠鏡にもうひとつの科学人生を与えた。

  1. 2009-03-06
    打上げ
    地球を追いかける太陽周回軌道へ投入。
  2. 2010-01
    初期惑星発見
    初期成果としてKepler-4bから8bなどを公表。
  3. 2013-05
    リアクションホイール故障
    主ミッションと同じ精度の一点注視が困難になる。
  4. 2018-10-30
    退役
    燃料枯渇により科学運用を終え、安全な太陽周回軌道に残る。

03エピソード

ケプラーは、派手に移動する探査機ではない。じっと見ることの威力を、宇宙望遠鏡で証明した。

宇宙の「定点観測カメラ」だった

ケプラーは全天を撮り歩いたわけではなく、星が密集するひとつの領域を長く見続けた。惑星が前を横切る瞬間を待つには、同じ星を何年も測る必要がある。退屈に見える観測戦略こそが、地球サイズ惑星の統計を作る近道だった。

壊れてから、K2として別の望遠鏡になった

リアクションホイール故障後、太陽光圧は敵にも味方にもなった。NASAは、太陽光圧を使って姿勢を維持する工夫により、K2として新しい観測を続けたと説明している。故障を完全に直すのではなく、制約を使いこなした運用だった。

関連資料: NASA K2 overview

「スーパーアース」という空白を見つけた

ケプラーが多く見つけた惑星サイズには、地球より大きく海王星より小さい世界がある。太陽系には代表例がないため、惑星形成を考えるうえで大きな宿題になった。遠くの星を測った結果、私たちの太陽系の偏りも見えてきた。

関連資料: NASA Kepler legacy

TESSやJWSTの前提を作った

ケプラーは、惑星が多いことを統計的に示した。TESSは近くて明るい星の惑星を探し、JWSTなどは大気観測へ進む。ケプラーの役割は、個々の美しい発見だけでなく、次に何を詳しく調べるべきかを宇宙全体の地図として示した点にある。

関連資料: TESSページ

04軌道

ケプラーは地球周回ではなく、地球を少しずつ遅れて追う太陽周回軌道を採った。地球の影や放射線帯を避け、安定して同じ星野を見続けるためである。

Earth Kepler Cygnus field

05搭載機器

PHOTOMETER

高精度測光器

星の明るさを連続測定し、惑星通過による微小な減光を検出した。ケプラーは実質的にこの一つの観測装置を中心に作られた。

0.95 m

広視野望遠鏡

大きな星野を同時に監視するための広視野光学系。NASAは口径約1m級の特殊な望遠鏡と説明している。

CCD ARRAY

大型デジタルカメラ

打上げ当時、宇宙観測用として非常に大規模な撮像素子群を使い、多数の星を同時に測光した。

RWA

リアクションホイール

高精度な姿勢保持を担った。故障後は太陽光圧を利用するK2運用へ切り替わった。

06設計

ケプラーは、惑星を直接撮る望遠鏡ではなく、恒星の明るさをきわめて安定して測る装置だった。大きな鏡、広い視野、大量のCCD、安定した熱環境と姿勢制御が、長期間の測光を支えた。

地球から離れることで安定する

地球周回では、地球の陰、反射光、放射線帯、月や地球の見かけの移動が観測を乱す。太陽周回の地球追随軌道なら、同じ星野を長く見続けやすい。軌道は観測品質の一部だった。

数ではなく、変化を見る

ケプラーのデータは「星が何個写ったか」ではなく「同じ星がどれだけ暗くなったか」を読む。わずかな減光を見逃さないため、機器だけでなくデータ処理と候補検証の仕組みが不可欠だった。

故障後の姿勢制御が設計を拡張した

K2では、太陽光圧で機体が回される力を逆に使い、残ったホイールとスラスターで釣り合いを取った。これは元の設計寿命を単に延ばしたのではなく、制御思想を変えて別ミッションへ作り替えた例である。

08資料