// Infrared space observatory · NASA / ESA / CSA · 2021-130A
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡
JAMES WEBB SPACE TELESCOPE
JWSTは、L2で冷えた巨大な金色の鏡により、初期宇宙、銀河形成、星の誕生、系外惑星大気を赤外線で見る宇宙望遠鏡。大きすぎるため、折りたたまれて打ち上げられた。
01基本情報
ハッブルの後継ではなく、赤外線で別の宇宙を開くL2天文台。
| 開発・運用 | NASA / ESA / CSA |
|---|---|
| 打上げ | 2021年12月25日 Ariane 5, Guiana Space Centre |
| L2到着 | 2022年1月24日 |
| 状態 | 運用中 |
| 主鏡 | 6.5 m 18枚の六角形ベリリウム鏡 |
|---|---|
| 軌道 | 太陽-地球L2周辺 |
| 波長 | 近赤外・中間赤外 |
| 機器 | NIRCam / NIRSpec / MIRI / FGS-NIRISS |
02ミッション
JWSTは、太陽-地球L2で赤外線宇宙を観測するNASA・ESA・CSA共同の基幹天文台である。6.5 m分割主鏡、5層サンシールド、0.6〜28.5 μmの観測範囲により、初期宇宙、星形成、惑星系、系外惑星大気を一つの観測所で扱う。
赤外線で「遠い」と「冷たい」を同時に見る
宇宙膨張で初期銀河の光は赤外線側へ伸びるため、最初期の星形成や銀河成長を見るには可視光だけでは足りない。JWSTは近赤外から中間赤外までを高感度に測り、ビッグバン後数億年の銀河候補、塵に隠れた星形成領域、低温の惑星系円盤を同じ天文台で追う。ハッブルが紫外・可視で形と若い星を読んだのに対し、JWSTは赤外線で塵の向こう側と赤方偏移した光を読む。
L2とサンシールドが感度を作る
赤外線望遠鏡では、望遠鏡自身の熱が観測ノイズになる。JWSTは地球から約150万 km離れた太陽-地球L2近傍に置かれ、太陽・地球・月をおおむね同じ側に保つ。21 m級の5層サンシールドは観測側を約40 K級まで冷やし、MIRIはさらに冷凍機で低温に保たれる。軌道と熱設計は背景説明ではなく、赤外線感度そのものを成立させる主装置である。
折りたたんで打ち上げ、宇宙で望遠鏡にする
6.5 m主鏡とテニスコート級のサンシールドはAriane 5のフェアリングにそのまま入らない。そのため18枚のベリリウム鏡、二次鏡、サンシールド、展開タワーを畳み、打上げ後に段階的に展開した。さらに各鏡セグメントを波面制御でナノメートル級に合わせ、18枚を1枚の主鏡として働かせる。JWSTの打上げは「衛星を運ぶ」だけでなく、「宇宙で天文台を組み上げる」工程を含んでいた。
観測時間は共同利用の資源になる
JWSTは単一テーマの探査機ではなく、世界の研究者が提案を出す汎用天文台である。NIRCam、NIRSpec、MIRI、FGS/NIRISSにより、撮像、多天体分光、コロナグラフ、時系列分光を切り替えられる。初期宇宙の銀河、太陽系天体、星形成領域、系外惑星大気を同じ観測所で扱えることが、基幹天文台としての価値を作っている。
最初の画像は性能確認でもあった
2022年7月の初画像公開は広報だけでなく、展開、冷却、鏡合わせ、機器較正、データ処理が一連の観測系として成立したことの宣言だった。SMACS 0723の深宇宙画像、WASP-96 bのスペクトル、カリーナ星雲、南のリング星雲、ステファンの五つ子は、それぞれ重力レンズ、系外惑星大気、星形成、恒星進化、銀河相互作用を示す試験対象でもあった。
- 1996NGST構想が始まる後のJWSTにつながるNext Generation Space Telescopeとして検討が進む。
- 2002James Webb Space Telescopeへ改名NASAの基幹赤外線天文台として計画名が定まる。
- 2016主鏡18枚の組立完了6.5 m級分割鏡を実機として組み上げ、地上試験へ進む。
- 2021-12-25Ariane 5で打上げフランス領ギアナから打ち上げられ、L2へ向かう航路に入る。
- 2022-01-04サンシールド展開完了5層膜の展開・テンション調整に成功し、熱設計の最大の山を越える。
- 2022-01-24L2周辺軌道へ到着太陽-地球L2近傍のハロー軌道で観測準備を続ける。
- 2022-03主鏡の像合わせが進む18枚の鏡セグメントを一つの光学系として合わせ込む。
- 2022-07-11最初の深宇宙画像を公開SMACS 0723の赤外線深宇宙画像が公開され、科学運用の入口を示す。
- 2022-07-12初期観測一式を公開星形成、惑星状星雲、銀河群、系外惑星スペクトルを含む最初の成果を発表。
03エピソード
数字だけでは見えない判断、危機、発見の瞬間を、出来事を直接確認できる資料と結び直す。
戻れないL2へ、最初から少し足りなく飛ばす
2021年12月25日19時50分EST、WebbはL2へ向かう最初の軌道修正を始め、65分間噴射した。Ariane 5が最初から少し加速不足にしたのは、過加速後に地球側へ戻すため反転すると望遠鏡と構体を太陽へさらし、観測開始前に過熱させるからだった。このためNASAは一度で速度を合わせず、三回の小さな修正で目標へ近づく設計を採用。その結果、熱姿勢を崩さずL2 halo軌道へ入り、余った推進剤を観測寿命へ残せた。
二週間を順にほどき、最後の鏡翼を13時17分に留める
2021年12月25日の打上げ後、NASA・ESA・CSAのWebbはsunshield、secondary mirror、主鏡翼を約二週間かけて順に展開した。二枚の主鏡翼はAriane 5へ収めるため折り畳まれ、他の主要展開を終えた後でなければ観測形状にならない。このため地上管制は複数日に分けて遠隔操作し、1月7日に一方、2022年1月8日08時53分ESTに最後の一方を動かした。13時17分に固定すると直径21 ftの主鏡を含む全主要展開が完了し、次の18 segment鏡合わせへ進める構造になった。
十八個の星像を、一枚の6.5 m鏡へ重ねる
2022年1月12日、Webbの主鏡は展開済みでも18 segmentが別々の方向を向き、同じ恒星を18個のぼけた像として写す状態だった。NASAの地上班はNIRCamで各segment由来の像を識別し、裏面の126 actuatorとsecondary mirror用6 actuatorを十日以上かけて拘束位置から動かした。このため約三か月のwavefront sensingで位置を数十nm級まで反復補正し、18枚を単一の6.5 m鏡として合成。その結果、launch時に折り畳んだ光学系を宇宙で初めて一つの焦点へ戻せた。
04軌道・展開
Ariane 5から分離したJWSTは地球を周回せず、約30日で太陽—地球L2へ直接向かった。その飛行中に太陽電池、通信アンテナ、5層サンシールド、二次鏡、主鏡翼を順番に展開し、L2周辺を約6か月で一周するハロー軌道へ入った。
- 01Ariane 5分離地球周回を経ず、L2へ直接向かう速度で分離。
- 02電力・通信太陽電池と高利得アンテナを初日に展開。
- 035層遮熱パレット、タワー、膜、テンションを順に展開。
- 04望遠鏡展開二次鏡と主鏡翼を固定し、冷却・鏡合わせへ。
- 05L2科学運用約6か月周期のハロー軌道で観測を継続。
05搭載機器
近赤外カメラ
初期宇宙、星形成、系外惑星などを高感度で撮像する。
近赤外分光
多数天体や系外惑星大気のスペクトルを測る。
中間赤外装置
塵、低温天体、分子の情報を中間赤外で読む。
06設計
JWSTは、冷たい望遠鏡と暖かい宇宙機を5層サンシールドで分けた天文台である。光、熱、姿勢、電力、データの各経路が、赤外線背景を増やさず18枚の鏡を一枚として働かせるよう組まれている。
サンシールドは感度を作る
5層膜は暖側の熱を層ごとに横へ逃がし、望遠鏡側を約40 K級へ冷やす。中間赤外のMIRIだけは、暖側から延びるHe冷凍機で6.7 K以下にする。
18枚を一枚の鏡へ
NIRCamで波面を測り、各鏡の6自由度と曲率を調整する。展開後の鏡合わせは一度きりではなく、観測中も定期的に確認される制御ループである。
誘導と観測は別の役割
FGSは目標星を捕捉して姿勢系へ誤差を渡し、NIRISSは科学観測を行う。反作用輪は微細指向、スラスタは軌道維持と運動量除去を担当する。
観測データは暖側へ渡す
四つの機器のデータはISIM電子系からC&DHへ入り、SSRへ保存され、Ka帯で地上へ送られる。光学機器同士を直列につなぐ構成ではない。
07写真・図版
実機構造と初期成果が同時に分かるよう、鏡、展開後の姿、初画像を並べる。



08関連文献
- The James Webb Space Telescope
- Scientific discovery with the James Webb Space Telescope
- The James Webb Space Telescope Mission: Optical Telescope Element Design, Development, and Performance
- In-orbit Performance of the Near-infrared Spectrograph NIRSpec on the James Webb Space Telescope