// Exoplanet survey telescope · NASA / MIT · 2018
TESS
TRANSITING EXOPLANET SURVEY SATELLITE
TESSは、明るく近い星を広く見張り、惑星が星の前を横切るときのわずかな減光を探す宇宙望遠鏡。Keplerが深く狭く見たなら、TESSは全天を広く素早く掃く。
01基本情報
地球近傍の明るい恒星を優先し、後続望遠鏡で詳しく調べやすい惑星候補を増やす。
| 開発・運用 | NASA / MIT NASA Explorer Program |
|---|---|
| 打上げ | 2018年4月18日 Falcon 9、Cape Canaveral |
| 状態 | 拡張ミッション中 |
| 観測方法 | トランジット法 星の減光を時系列で検出 |
| 軌道 | 高楕円地球軌道 月と2:1共鳴する約13.7日周期の安定軌道 |
|---|---|
| 機器 | 4台の広視野カメラ |
| 観測対象 | 近傍の明るい恒星 |
| 波長 | 可視光 |
02ミッション
TESSの狙いは「見つけて終わり」ではない。次に詳しく調べる価値がある、近くて明るい恒星の惑星を探すことだ。
全天をセクターに分ける
TESSは空を細長い観測セクターに分け、同じ領域を数週間単位で見続ける。惑星が恒星の前を通ると、光度曲線に周期的な小さな落ち込みが現れる。この単純な変化を大量の恒星で探す。
Keplerとの役割分担
Keplerは狭い領域を深く見て、銀河に惑星がありふれていることを示した。TESSはその次の段階として、地球から比較的近く、明るい星を重点的に調べる。大気観測や質量測定へつなげやすい標的を選ぶ衛星である。
変光天体の広域監視機でもある
NASAはTESSが系外惑星だけでなく、小惑星、脈動星、超新星を含む遠方銀河など、明るさが変わる天体を監視すると説明している。惑星探査衛星でありながら、時間領域天文学の広い入口にもなった。
惑星発見は共同作業の入口
TESSが見つけるのは、多くの場合「惑星らしい減光」である。恒星の活動、食連星、背景天体の混入など、惑星ではない信号もたくさん混じる。地上望遠鏡やJWST、CHEOPS、分光観測による追跡で質量や大気を調べて初めて、候補は性格を持った惑星になる。TESSは発見そのものより、次の観測へ渡すリストを作る衛星である。
全天サーベイの時間軸
TESSは同じ空を何度も巡回し、最初の主ミッション後も拡張観測でカバー域を広げた。これにより、長周期惑星や、数年ぶりに変化する恒星活動、突発天体を拾いやすくなっている。広視野の測光を続けることが、惑星探査と時間領域天文学を同時に育てている。
- 2018-04-18打上げFalcon 9で地球高楕円軌道へ。
- 2018科学観測開始南天から全天サーベイを開始。
- 2020主ミッション完了2年間の主ミッション後も拡張観測へ。
- 2025全天マップ更新多数の確定・候補惑星を含む広域成果が公開される。
03エピソード
TESSは「見つける衛星」であり、次の望遠鏡へバトンを渡す衛星である。
Keplerの次に、近い星へ
Keplerは狭い領域を長く見て、銀河には惑星がありふれていることを示した。TESSは戦略を変え、明るく近い恒星を広く見た。大気観測や質量測定へ進める候補を選ぶため、発見後の「調べやすさ」まで含めて設計された。
月と2:1で響く軌道
TESSの高楕円軌道は、月と2:1の共鳴に近い安定な軌道で、地球の放射線帯や熱変動を避けながら長時間観測できる。地味だが、測光の安定性とデータ送信のしやすさを両立する巧い軌道である。
小さな減光に惑星が隠れる
トランジット法で探す減光は、恒星の明るさのごく一部でしかない。星の黒点や揺らぎ、観測ノイズを越えて周期的な落ち込みを見つけるため、TESSの成果はカメラだけでなく光度曲線解析の成果でもある。
惑星以外も大量に拾う
明るさの変化を広く見張る衛星は、惑星だけに反応するわけではない。脈動星、食連星、小惑星、超新星、活動銀河核も時系列データに現れる。TESSは系外惑星探査機でありながら、全天の変光カタログを作る観測所にもなった。
04軌道
月の摂動を利用した高楕円軌道で、長い連続観測時間と低い熱・放射環境変動を得る。
05搭載機器
広視野カメラ
4台のカメラで広い空を同時に測光し、恒星の明るさの時間変化を記録する。
可視光検出器
星の明るさを高い安定性で測り、微小な減光を拾う。
光度曲線解析
膨大な時系列から、周期的なトランジット候補を抽出する地上解析系。
06設計
TESSは大口径で一点を深く見る望遠鏡ではない。小さめのカメラを複数並べ、広い空を安定して測光することに徹した。明るい恒星を選ぶ設計により、発見後の分光観測や大気観測へつなげやすい。
4台カメラで空を短冊にする
4台の広視野カメラは縦に並び、空の長いセクターを一度に見る。一定期間その領域を測光し続け、次のセクターへ移ることで全天を掃く。高解像度の美しい画像ではなく、安定した時系列を大量に作ることが設計の中心である。
発見後の観測を見越したターゲット選び
暗い遠方の星で惑星候補が見つかっても、大気や質量を詳しく調べるのは難しい。TESSが近く明るい星を重視するのは、発見をJWSTや地上大型望遠鏡へつなげるためである。衛星の価値はカタログ数だけでなく、次に調べられる候補を増やす点にある。
07写真・図版
トランジット法と全天セクター観測のイメージ。
08資料
- NASA TESS mission page
- MIT TESS project
- TESS HEASARC archive