// 4日間、62周、米国初の宇宙遊泳 · 1965-043A
ジェミニ4号
GEMINI IV / GT-4
ジェミニ4号は、二人の乗員が軌道上で4日間働けるかを初めて本格的に試した米国の有人飛行である。Titan II第2段を目視で追った接近試行は推進剤42%を使って中止。一方、Edward Whiteは23分間の米国初EVAを成功させた。第48周回の計算機故障後は、予定した揚力誘導を捨て、62周回目にゼロ揚力の弾道再突入で帰還した。
01基本情報
軌道投入から着水まで97時間56分12秒。成功した作業と中止した機動の両方が、後続のランデブー手順を作った。
| 打上げ | 1965-06-03 15:15:59 UTCCape Kennedy Launch Complex 19 |
|---|---|
| 打上げ機 | Titan II GLVGemini Launch Vehicle 4 |
| 乗員 | James A. McDivitt / Edward H. White IICommand Pilot / Pilot |
| 打上げ時質量 | 3,574 kgNASA公式値 |
| 国際標識番号 | 1965-043AGemini IV |
| 初期軌道 | 162.3 × 282.1 km15:22:05 UTCに軌道投入 |
| 第1周回後 | 166 × 290 km第2段への接近試行で軌道を変更 |
|---|---|
| 軌道傾斜角 | 32.5°低地球軌道 |
| 飛行 | 62周/97時間56分12秒1965-06-03〜06-07 |
| EVA | 23分米国人初、Whiteが実施 |
| 実験 | 11件工学・医学・宇宙科学・国防関連 |
| 着水 | 1965-06-07 17:12:11 UTC大西洋、目標から約81 km/USS Waspが回収 |
02ミッション
派手な宇宙遊泳の同じ日に、軌道上で目標を追う難しさと、限られた推進剤を守る判断も学んだ。
三周から、四日へ
直前の有人飛行Gemini IIIは3周だった。Gemini IVは一気に62周へ延ばし、二人の健康、睡眠、食事、作業計画と、電力・酸素・冷却・通信を約98時間維持できるかを試した。月へ向かうApolloには、打上げと帰還だけでなく、狭い船内で複数日にわたって判断と作業を続ける能力が必要だった。
見えていても、距離が分からない
軌道投入直後、McDivittは分離したTitan II第2段を追った。目標には二つの灯火しかなく、Gemini IVには正確な距離を測るランデブーレーダーがなかった。前方の物体へ直感的に機首を向けて加速すると、軌道の大きさと角速度まで変わる。第1周回で軌道を166×290 kmへ上げたが接近は成立せず、第2周回の早い段階で推進剤の42%を使ったため、残る目的を守って中止した。
23分のEVAは、8 mの生命線で成立した
第3周回、Whiteは船内を減圧してハッチから外へ出た。宇宙服は約8 mのアンビリカルで船内の酸素と通信につながれ、身体拘束用テザーもまとめられていた。手持ち式ガス噴射装置は酸素を噴いて姿勢を変えたが、約3分で使い切った後はテザーと身体動作を使った。EVAは23分。帰還後はハッチのラッチが閉まりにくく、二人で密閉を回復してから再加圧した。
推進剤を使わないことも、飛行操作
接近試行の後、乗員は約30時間のドリフト飛行でOAMS推進剤を節約した。姿勢を常に固定するより、必要な観測・通信・熱条件だけを満たし、それ以外は自由漂流させる。これは「何もしない」のではなく、残りの飛行と帰還能力を資源配分で守る運用だった。
計算機を失っても、帰還系は残った
第48周回で搭載計算機が故障し、予定していた計算機制御の揚力再突入は使えなくなった。第62周回の始めに4基の固体逆噴射ロケットを点火し、乗員は一定のロールを与えるゼロ揚力弾道モードで大気へ入った。着水点は目標より約81 km手前になったが、回収海域内でUSS Waspが乗員と宇宙船を回収した。
11の実験と、新しいMission Control
飛行中は荷電粒子・磁場・地球縁、地形・気象、薄明現象、運動・心音・骨変化、放射線・航法など11件の実験を実施した。加えてHoustonの新しいMission Control Centerが、初めて有人ミッションを打上げから帰還まで管制した。宇宙船内、世界の追跡局、Houstonを一つの運用系にした経験はApolloへ直結した。
- 1965-06-03 15:15:59 UTCTitan IIで打上げMcDivittとWhiteを乗せ、約6分後に162.3×282.1 kmへ投入。
- 第1〜2周回第2段への接近を中止目視追尾で軌道を166×290 kmへ変更。推進剤42%消費を受け、EVAと長期飛行を優先。
- 第3周回米国初のEVAWhiteが23分船外活動。酸素噴射式の手持ち装置とアンビリカルを使用。
- その後 約30時間ドリフト飛行OAMS推進剤を節約しながら、長期飛行と実験を継続。
- 第48周回搭載計算機が故障計算機制御の揚力再突入を断念し、ゼロ揚力弾道モードへ切替。
- 第62周回・1965-06-07逆噴射、再突入、着水11:56 ESTに逆噴射、16分後に大西洋へ着水。USS Waspが回収。
03エピソード
追いつけない軌道力学、船外作業の身体負荷、計算機を失った帰還が、四日間を訓練から実証へ変えた。
前へ噴けば追いつくはずが、1周で割当推進剤の大半を失う
1965年6月3日、Gemini IVのMcDivittとWhiteは分離したTitan II上段へ近づこうと、見えている目標へ機首を向けて加速した。しかし軌道上では前方噴射が直ちに距離を縮めず、高い軌道へ上がって相対運動を変える。第一周回の終わりまでにstationkeeping用OAMS推進剤の大半を使っても接近できず、Houstonは追跡を中止した。四日間の任務と船外活動を守るため失敗を打ち切り、後続Geminiでは位相調整と高度差を先に設計するrendezvous手順へ教訓を移した。
船外活動を1周遅らせ、20分の自由と閉じにくいhatchを越える
Ed Whiteの米国初EVAは第二周回の予定だったが、rendezvous作業でcrewの負荷が上がり、McDivittは一周延期した。第四周回の4時間30分後にWhiteが外へ出ると、hand-held maneuvering gunのガスは約3分で尽き、その後は8 mのtetherで姿勢を扱った。約20分後に戻ったもののhatchのlatchが噛みにくく、二人は与圧前に閉鎖をやり直した。楽しげな映像の裏で、時間余裕・道具の持続時間・入口操作を一組で管理すべきことが露わになった。
第48周回の記憶変更で計算機誘導を失い、弾道で帰る
任務後半の第48周回、Gemini IVのcomputer memoryが意図せず変化し、予定していたcomputer-controlled reentryを実行できなくなった。四日飛行の最後に誘導方式を失う意外な故障だったが、crewとHoustonは姿勢を整えてopen-loopのballistic reentryへ切り替えた。揚力を使う精密誘導を捨てる代わりに確実な減速を選び、1965年6月7日に大西洋へ着水した。目標から約40 miles外れても安全に回収され、手動の退避手順が実飛行で機能した。
04軌道と飛行フェーズ
第2段との距離は、軌道半径と角速度を変えて詰める。同じ向きに62周した後、逆噴射で近地点を大気圏内へ下げて弾道再突入した。
- 01軌道投入Titan IIから分離し、162.3×282.1 kmの同方向周回へ入る。
- 02第2段接近試行第1周回で166×290 kmへ変更。推進剤42%消費を受け第2周回で中止。
- 03EVA・ドリフト第3周回に23分EVA。その後約30時間は推進剤節約の自由漂流。
- 04長期飛行11件の実験を進め、第48周回の計算機故障後に帰還方式を変更。
- 05弾道再突入第62周回で逆噴射し、ゼロ揚力モードで大気へ進入して大西洋へ着水。
05搭載機器・実験
Gemini IVの観測は一台の主センサーではなく、乗員が操作するカメラ、計器、生体測定を組み合わせた11実験だった。
G4C宇宙服とHHMU
船内へつながるアンビリカル、緊急酸素パック、酸素噴射式の手持ち機動装置で船外活動を実施。
荷電粒子・磁場計測
陽子電子分光、三軸磁力計、静電荷測定で低軌道の宇宙環境と機体帯電を記録。
地球・薄明写真
地形、気象、二色地球縁、暗夜・薄明現象をフィルムへ撮影し、帰還後に解析。
医学実験
飛行中運動、心音、骨脱灰などを調べ、複数日にわたる無重量環境への人体反応を評価。
放射線・簡易航法
船内の放射線分布と、乗員による簡易航法手順を評価。
06機体設計・EVA構成
ジェミニ4号の帰還モジュール、二分割アダプター、開放ハッチ、G4C宇宙服を、軌道飛行と船外活動の実配置で読む。
作図根拠: NASA — Gemini IV Mission Report / NASA History — Gemini IV EVA
EVAは開いたハッチから始まる
Whiteは右席ハッチから船外へ出て、船内供給を運ぶアンビリカルと独立した安全テザーで機体へつながった。手持ち式HHMUは移動用であり、生命維持の接続そのものではない。
4日間を電池で支える
Gemini IVは後続機の燃料電池ではなく、機器区画の銀亜鉛電池4基を主電源とした。同じ区画にOAMSの推進剤と機器が集まり、長期飛行と接近試行の双方で消耗する資源を帰還船の外へ置いている。
帰還に必要な部分だけを残す
機器区画を先に捨て、4基の固体ロケットで逆噴射し、その区画も分離する。独立した再突入RCS、熱シールド、回収区画、キャビンだけが大気圏へ戻る。
07写真・運用記録
宇宙船の外で働くWhiteと、その一挙手を世界の追跡局から支えたHouston管制室。


08一次資料
飛行経過はミッション報告、機体構成はGemini技術史、EVA装備はNASA技術会議録で照合する。
- Gemini IV
- Gemini Program Mission Report: Gemini IV
- Gemini IV: Learning to Walk in Space
- Project Gemini: A Chronology — Concept and Design
- Project Gemini: A Chronology — 1964
- Gemini Summary Conference