// Assembled Orbital Laboratory · 5 Agencies · 1998-067A
国際宇宙ステーション
INTERNATIONAL SPACE STATION
最初はZaryaとUnityだけだった。そこへ居住区、実験室、94 mのトラス、太陽電池、ロボットを飛行ごとに足し、補給船で高度まで支える。ISSは一機の衛星ではなく、軌道上で建設と保守を続ける国際都市である。
01基本情報
高度約400 kmを秒速約7.7 kmで飛びながら、居住・研究・物流・軌道維持を途切れさせない巨大なモジュール式宇宙機。
| 運用パートナー | NASA / Roscosmos / JAXA / ESA / CSA |
|---|---|
| 組立開始 | 1998年11–12月 ZaryaとUnityを軌道上で結合 |
| 連続有人滞在 | 2000年11月2日から継続 |
| 規模 | トラス94 m / 約420 t 構成・訪問船により変動 |
| 軌道 | 高度約400 km / 傾斜角51.6° |
|---|---|
| 周期・速度 | 約90分 / 約7.7 km/s |
| 発電 | 主太陽電池8翼 + iROSA 日照中に発電し電池を充電 |
| 利用実績 | 4,000件超の研究・技術実証 2025年末時点 |
02ミッション
ISSのミッションは単一の観測ではない。宇宙で暮らすこと、実験すること、国際協力を日常運用に落とし込むことが目的そのものである。
軌道上の研究所
微小重力では、流体、燃焼、結晶成長、細胞、材料が地上とは違う振る舞いを見せる。ISSはその環境を長期に使える実験施設であり、医学、材料、生命科学、地球観測、宇宙技術の実験が行われる。
住み続けることの技術
宇宙飛行士が数か月単位で滞在するには、空気、水、電力、温度、廃棄物、運動、医療、通信を回し続ける必要がある。ISSは月・火星探査へ向けた、人間が宇宙で生活するための実地試験場でもある。
国際協力を運用する
ISSはモジュール、補給船、管制センター、実験ラック、訓練施設が世界中に分散したシステムである。NASAは、国際飛行クルー、複数の打上げ機、各国の運用施設、研究コミュニティを統合するプログラムだと説明している。
低軌道経済への橋
ISSは政府主導の宇宙ステーションでありながら、商業補給、民間宇宙船、商業利用、将来の民間ステーションへつながる実験場にもなった。地球低軌道を「行く場所」から「使う場所」へ変える橋である。
軌道上施設としての運用設計
ISSは打ち上げて終わる衛星ではなく、補給、修理、船外活動、実験交換を前提にした施設である。太陽電池トラス、ラジエータ、姿勢制御、ドッキングポート、実験ラックは、単体性能よりも「交換しながら使い続ける」ことを重視して配置されている。
低軌道では大気抵抗で高度が少しずつ下がるため、補給船やサービスモジュールによるリブーストも運用の一部になる。研究施設でありながら、軌道維持、熱制御、電力配分、衝突回避を毎日続ける巨大な宇宙機でもある。
- 1998-11組立開始最初の要素が軌道へ。
- 2000-11-02連続有人滞在開始Expedition 1以降、人類が住み続ける。
- 2008「きぼう」組立開始日本実験棟がISSの主要実験施設へ。
- 2011主要組立完了スペースシャトル時代の大規模組立を終え、完成形に近い研究施設として運用へ移った。
- 2020商業有人輸送が実運用へCrew Dragonの運用により、ISSへの有人アクセスが新しい段階へ入った。
- 2024-2026低軌道移行期の運用ISSの継続利用と、将来の民間低軌道ステーションへの移行準備が並行して進む。
- 2025-11-0225年の連続有人滞在NASAが歴史的節目として紹介。
03エピソード
ISSは、宇宙機であると同時に、軌道上で組み立て、住み、直し続ける国際施設である。
九分で届いたZaryaへ、十六日後にUnityをつなぐ
ISS建設は完成した船を一度に上げる方法ではなく、異なる国のmoduleを軌道上で結ぶ長期工程だった。1998年11月20日、Khrunichev製ZaryaはProtonで打ち上がり、約9分後に自力飛行を開始した。しかし最初の要素だけでは後続moduleを受け入れる接続口が足りないため、Zaryaに姿勢・通信・電力を担わせて軌道上で待機させた。NASAは12月4日にShuttle Endeavourで米国初のelement Unityを運び、12月6日に結合した。その結果、Unityの複数接続口から次の要素を増設でき、二部品だけの機体が拡張可能なstationへ変わった。
三人がhatchを開けた日から、「無人へ戻す」をやめる
2000年11月2日、Bill Shepherd、Yuri Gidzenko、Sergei KrikalevのExpedition 1がISSへ入り、恒久滞在を始めた。当時のstationは現在ほど完成しておらず、生命維持、電力、姿勢、補給のどれかが途切れれば三人を退避させる必要があった。米露の管制班はSoyuzを救命船として結合したまま、crew交代前に次の船を重ねる運用を選択した。その結果、組立中も「常に誰かが住む」条件を保ち、建設現場を連続有人研究所へ移行できた。
裂けた太陽電池を、五本の「cufflink」で縫う
2007年、P6太陽電池wingを新位置で展開した際、panelがguide wireへ絡んで裂け、全面展開すれば損傷が広がる状態になった。地上とcrewは通常手順を捨て、絶縁材から五本のcufflink補強具を急造した。11月3日、医師でもあるScott Parazynskiはstation armの先へShuttle点検boomまで継ぎ足した足場で損傷部へ到達し、通電部から距離を保ちながら裂け目を固定した。その結果、arrayを完全展開し、後続moduleに必要な発電能力を回復した。
故障pumpを外した後、宇宙服まで替えて二回目へ進む
2013年12月11日、External Thermal Control SystemのLoop A pump moduleが故障し、ammonia冷却を失った系統では機器温度を守るため利用を制限した。Rick MastracchioとMike Hopkinsは12月21日の5時間28分EVAで故障pumpを撤去したが、airlock再加圧時に宇宙服のsublimatorへ水が入った疑いが生じた。NASAは次のEVAを一日延ばして予備服へresizeし、12月24日に7時間30分かけて予備pumpを装着。故障修理と新たな服のriskを切り分け、冷却系を戻した。
04軌道
ISSは約90分で同じ向きに地球を一周する。希薄な大気が高度を削るため、Progress、Cygnus、過去のシャトルやATV、Zvezdaの推進系が、ときどき進行方向へ加速して軌道を押し上げる。
01 / 90-minute orbit
02 / drag and reboost
03 / assembled in orbit
05搭載機器
実験モジュール群
Destiny、Columbus、きぼうなどが微小重力実験を担う。
生命維持系
空気、水、温度、廃棄物を管理し、長期滞在を支える。
ロボットアーム
補給船把持、船外機器移設、宇宙飛行士支援を行う。
06設計
ISSは電気を作るだけでも、実験するだけでも成立しない。発電、放熱、姿勢・軌道、通信、物流の5系統が、LABS(実験施設)、ECLSS(生命維持)、ROBOTS(ロボット保守)を止めないために相互接続される。
電気は作る量より、配り続ける構造
8つの電力チャンネルは太陽電池、スイッチング、蓄電、DC変換を分担する。iROSAは既存翼の前に展開し、老朽化した主翼を残したまま発電能力を補強した。
室内の水と、船外のアンモニア
乗員区画は水ループで安全に熱を集め、界面熱交換器から外部の無水アンモニアへ渡す。2系統の外部ループが熱を6枚の大型ラジエータへ運び、宇宙へ放射する。
普段はCMG、軌道変更は推進
4基のCMGは電力だけで巨大な機体の姿勢を保つ。高度を上げるリブーストやデブリ回避では、Zvezdaまたは結合した訪問船のスラスタを使う。
実験は標準インターフェースへ
EXPRESSラックなどは電力、冷却、ガス、データを共通化する。研究テーマごとに設備を作り直さず、ラックやペイロードを交換して新しい実験を受け入れられる。
通信も一つの国際施設
実験・テレメトリ・音声・映像は船内ネットワークへ集まり、S/Ku帯とTDRSを経て地上へ届く。各国の管制施設は担当モジュールと実験を協調運用する。
補給船は貨物室であり推進段
訪問船は乗員、食料、実験、交換部品、推進剤を運ぶ。結合後は一部の船がリブーストも担い、ロボットアームと船外活動が外部交換ユニットを保守する。
07写真・図版
94 mのトラスと太陽電池が広がる全景、そして有人施設から見た地球。


08関連文献
軌道・組立・電力・熱・実験設備を、NASAの構成資料と各参加機関の施設資料からたどる。
- NASA International Space Station Facts and Figures
- NASA Station Assembly Elements
- International Space Station Familiarization
- JAXA Kibo
- ESA Columbus laboratory