科学軌道
天体へ指向し、4本の光路で撮像分光を積み上げる。
// FOUR TELESCOPES · TWO DETECTOR TECHNOLOGIES · 1993-011A
4基の薄膜X線望遠鏡の焦点に、2台のCCD検出器SISと2台のガス検出器GISを一対一で配置した。約7年3か月の観測を終わらせたのは、天体観測機器ではない。太陽フレアに続く磁気嵐が上層大気を膨張させ、希薄な大気の抵抗が姿勢と電力を奪った。
観測性能を決めた焦点距離と、終末期の空気抵抗に関わる低軌道。
| 打上げ | 1993-02-20M-3SIIロケット7号機/内之浦 |
|---|---|
| 質量 | 420 kg打上げ時 |
| 全長 | 4.7 m伸展式光学ベンチ展開後 |
| 軌道 | 525 × 615 km打上げ後のほぼ円形低軌道 |
| 軌道傾斜角 | 31°周期 約96分 |
|---|---|
| X線望遠鏡 | 4基/焦点距離3.5 m0.5–12 keV |
| 焦点面 | SIS 2台 + GIS 2台4光路を並列に使用 |
| 再突入 | 2001-03-02 約14:21 JST南緯8.2°・東経163.2°付近の太平洋 |
科学軌道、姿勢喪失、再突入は、時間も物理過程も別の段階である。
打上げ後、伸展式光学ベンチEOBを展開して焦点距離3.5 mを確保し、4基のXRTと4台の焦点面検出器を結んだ。低エネルギー側の分解能に強いSISと、高エネルギー側・広視野・高計数率に強いGISを同じ天体へ向け、位置とスペクトルを相補的に測った。
525 × 615 km、傾斜角31°の軌道を約96分で回り、地球による天体の掩蔽や高バックグラウンド域を避けて観測時間を積み上げた。衛星は全天を連続走査したのではなく、選んだ天体へ姿勢を固定する指向観測を反復した。
2000年7月14日の大規模太陽フレアに続き、15日に磁気嵐が到来。高度約440 kmの上層大気密度が急増し、空気抵抗で姿勢が乱れた。セーフホールドでも安定を保てず、太陽電池への光が不足して蓄電池が枯渇し、科学観測へ戻れなくなった。
姿勢異常の直後に地球中心へ落下したわけではない。最低限の運用を試みながら周回を続け、太陽活動で膨張した大気の抵抗を受けて徐々に高度を失った。2001年3月2日、太平洋上で大気圏へ再突入した。
X線CCDが重力で歪む鉄輝線を見せた成果と、太陽フレアが低軌道の大気を変えて終幕を早めた事件。
1994年、ASCAはSeyfert銀河MCG−6−30−15を4.5日間にわたり観測した。通常なら約6.4 keVに細く立つ鉄Kα線が、赤側へ長く伸びた非対称形として現れ、単純な検出器幅や遠方ガスでは説明できなかった。研究者はSISの高いエネルギー分解能と長時間積算を生かして、放射源をブラックホール周囲の降着円盤、およそ6〜40重力半径に結びつけた。光子が強い重力と高速公転で赤方偏移・ドップラー変形する姿を、点像ではなく線の形から読む代表的成果になった。
2000年7月14日の巨大太陽フレアは翌15日に激しい磁気嵐を起こし、22〜23時UT、ASCAが飛ぶ高度約440 kmの大気密度を突如数倍へ増やした。希薄でも高速飛行中の抗力は姿勢外乱となり、衛星は安全退避モードへ入ったが保持できず、太陽電池への日射が減って蓄電池を使い切った。チームは観測装置を止めて充電を試みたものの、過放電した電池は回復せず観測を再開できなかった。設計寿命3〜4年を越えた7年半の任務は、機器故障ではなく太陽が上層大気を膨らませる連鎖で終幕へ向かった。
正常時は96分周期の指向観測。姿勢喪失後も約7か月半、同じ周回方向を保ちながら高度を失った。
天体へ指向し、4本の光路で撮像分光を積み上げる。
磁気嵐で増えた空気抵抗が、安全姿勢と発電を崩した。
観測不能後も何度も地球を回り、最後に軌道の接線方向から大気へ入る。
4基の望遠鏡と4台の検出器は、二種類の並列ペアを作った。
各120枚の薄いアルミ箔反射鏡に金をコート。斜入射で0.5–12 keVを集光。
各4枚のCCDで0.4–10 keVを測定。低エネルギー側とエネルギー分解能に優れる。
ガス蛍光比例計数管。SISより広い視野、高エネルギー側、高計数率に強い。
打上げ後に伸び、XRTと焦点面の間に3.5 mの光路を作る。
XRT→検出器の光路は4本が独立して並ぶ。電力・姿勢・データ処理はその4系統を共通バスとして支える。
各XRTは120枚の薄いアルミ箔を同心円状に重ね、金を施した面へX線を浅い角度で二回反射させる。四本の焦点距離は伸展式光学架台で同時に確保されるが、入射光は混ざらず、それぞれSIS0、SIS1、GIS2、GIS3へ届く。
SISはCCDで位置とエネルギーを細かく測り、GISはガス蛍光比例計数管で広い視野と高いエネルギー域を担う。イベント時刻、検出位置、波高は共通データ処理系へ入り、スタートラッカーとジャイロの姿勢履歴、軌道上の時刻と組み合わせて天球座標へ戻す。電力と熱制御は四系統を支える共有バスであり、独立した検出器を直列に結ぶものではない。
軌道、4光路、姿勢異常、再突入を確認できる公式資料。