// Magnetosphere and aurora observation satellite · ISAS · 1989-016A
あけぼの
AKEBONO / EXOS-D
あけぼのは、オーロラと磁気圏の物理を長期観測した日本の科学衛星。粒子がどこで加速され、極域電離圏から宇宙へどう流れ出すのかを、四半世紀以上にわたって追った。
01基本情報
オーロラ粒子の加速機構、磁気圏プラズマ、電磁波、放射線帯を長期に測った高楕円軌道衛星。
| 開発・運用 | ISAS 現 JAXA宇宙科学研究所 |
|---|---|
| 打上げ | 1989年2月22日 08:30 JST M-3SII-4、内之浦 |
| 状態 | 運用終了 2015年4月23日 |
| 国際標識番号 | 1989-016A |
| 質量 | 約295 kg |
|---|---|
| 形状 | 八角柱、太陽電池パドル4枚 |
| 軌道 | 近地点275 km、遠地点10,500 km、傾斜角75° |
| 周期 | 211分 |
02ミッション
あけぼのは、空に見えるオーロラを、磁力線、粒子、電場、波動が結びついた宇宙プラズマ現象として測った日本の磁気圏観測衛星である。
オーロラを「加速装置」として見る
オーロラは、宇宙空間から降り込む電子やイオンが上層大気を光らせる現象である。あけぼのの目的は、オーロラ粒子がどこで、どのような電場・波動・磁場環境の中で加速され、極域電離圏へ降り込むのかを測ることだった。ISAS/JAXAの公式ページは、オーロラ粒子の加速機構、発光現象、磁気圏プラズマの構造、プラズマ波動、電離圏から磁気圏へのイオン流出を主要テーマとして挙げている。
高楕円軌道で磁気圏を縦に切る
軌道は近地点275 km、遠地点10,500 km、傾斜角75.1度、周期211分の高楕円軌道だった。低高度の電離圏付近から、オーロラ加速領域、内側磁気圏、プラズマ圏までを一つの軌道で通過できるため、同じ衛星が「粒子が降り込む場所」と「その上流側」をまたいで測れる。赤道付近だけを回る衛星ではなく、高緯度へ深く入る軌道そのものが観測装置だった。
場・粒子・波・光を同時に測る
あけぼのは、オーロラTVカメラ、電場計、磁力計、プラズマ波動観測器、VLF/HF波動装置、低エネルギー粒子観測器、超熱的イオン質量分析器、熱的イオン・電子観測器、放射線モニター、太陽X線モニターを搭載した。粒子だけを見るのではなく、粒子を加速する電場、波動、磁場、そして発光の位置情報を合わせることで、極域磁気圏を一つの回路として読む設計だった。
長寿命が科学になった
1989年2月22日にM-3SII-4号機で打ち上げられ、2015年4月23日に運用を終えるまで26年を超えて観測を続けた。成果には、磁気嵐時のプラズマ圏電子密度の減少、放射線帯粒子の長期変動、オーロラ加速領域の電磁環境などが含まれる。短期観測ではイベントの切り取りになりがちな宇宙天気を、太陽活動周期をまたぐ時間軸で残したことが、あけぼのの大きな価値である。
- 1989-02-22M-3SII-4号機で打上げ8:30 JST、内之浦から打ち上げられ、近地点275 km・遠地点10,500 km級の高楕円軌道へ入った。
- 1989アンテナ・マストを展開して観測開始30 m級アンテナや伸展マストを使い、電場、磁場、粒子、プラズマ波、オーロラ画像を同時観測した。
- 1990初期観測成果を連続論文として公開Journal of Geomagnetism and Geoelectricityに、機体、電場、波動、粒子、オーロラTVの初期結果がまとまった。
- 1990s極域磁気圏の粒子加速を観測オーロラ加速領域を横切り、粒子と電磁場を同じ軌道で測る日本の主力磁気圏衛星になった。
- 2000s磁気嵐とプラズマ圏の長期変動を蓄積磁気嵐時のプラズマ圏密度低下や放射線帯粒子変動など、時間軸の長い宇宙天気研究に使われた。
- 2015-04-23運用終了遠地点高度の低下で科学観測の機会が減り、衛星・観測機器の高齢化も踏まえて、26年以上の運用を終了した。
- 2024-11-26大気圏へ再突入13:48 JSTごろ、南米上空で大気圏へ再突入したとISAS/JAXAが案内した。
03エピソード
長大アンテナが作る測定空間、二つの太陽周期、自然再突入までを同じ時間軸で読む。
30 mのアンテナで、機体自身の電気から離れる
1989年2月22日に打ち上げられたAKEBONOは、直径約1 mのスピン衛星から、先端間30 mの電界アンテナと5 m・3 mの伸展マストを展開した。オーロラ粒子を測る一方、衛星本体が作る電場やプラズマ擾乱は微弱な自然信号を汚す。そこで9種の観測装置を長い構造物の先へ離し、毎分約7.5回の回転で姿勢と測定方向をそろえた。小さな本体に長大な「測定空間」を付け足す物理配置が、電場・波動・粒子を同じ場所で照合する前提になった。
26年2か月を測り、11年周期を一機でまたぐ
AKEBONOの運用は1989年2月22日から2015年4月23日まで26年2か月に及び、当初想定を大きく超えた。同じ9装置で二回以上の約11年太陽活動周期をまたいだため、放射線帯粒子やオーロラ現象の変動を、別世代の衛星をつなぐ較正差なしに比べられた。終盤は軌道低下と機器劣化が進み、ISAS/JAXAは無理に観測点数を保つより、成立する観測とアーカイブを確実に残して2015年4月に運用を停止。長寿命そのものを時系列科学へ変えた。
最後の位置まで追えた、九年半後の自然再突入
推進系で落下点を選ぶ衛星ではなかったAKEBONOは、運用停止後も大気抵抗で軌道を下げ続けた。ISAS/JAXAは軌道監視を継続し、2024年11月26日13時48分ごろJST、南緯26.6度・西経54.1度、南米上空での大気圏再突入を確認した。科学運用終了から約9年7か月後である。観測データをDARTSへ残すだけでなく、機体が軌道環境から消える時刻と場所まで記録したことで、26年の運用史は寿命末期挙動を含む一つの工学資料として閉じられた。
04軌道
75°傾いた高楕円軌道は、同じ向きに周回しながら極域を高度方向に切る観測装置だった。26年の運用中も、その後も、大気抵抗による軌道低下はゆっくり進んだ。
- 01初期高楕円近地点275 km、遠地点10,500 km、傾斜角75°、周期211分。
- 02極域を縦断一方向の周回を繰り返し、電離圏からオーロラ加速領域、内側磁気圏までをつないだ。
- 03高度低下大気抵抗で軌道が徐々に縮小し、遠地点高度の低下で科学観測の機会も減った。
- 04運用終了後2015年の運用終了後も周回を続け、2024年11月26日に自然再突入した。
05搭載機器
9つの観測系が、磁場・電場・波動・粒子・発光を独立に測り、同じ位置と時刻で照合できる記録を作った。
磁場観測器
5 mマスト先端の3軸フラックスゲートと、3 mマストのサーチコイルで、直流磁場から800 Hzまでを測った。
電場観測器
ダブルプローブEFD-PとイオンビームEFD-Bという独立した2方式で、ベクトル電場を測定した。
波動・サウンダ
VLFは数Hz〜17.8 kHzの自然波、PWSは自然波と能動サウンダから電子密度・プラズマ構造を調べた。
粒子・イオン組成
低エネルギー粒子、超熱的イオンの質量、熱的イオン・電子を別々の検出器で測った。
放射線モニター
放射線帯の高エネルギー粒子を長期追跡し、磁気嵐と太陽活動に伴う変動を残した。
オーロラTVカメラ
粒子・電磁場の局所測定に、オーロラ発光の位置と形という光学情報を重ねた。
06設計
八角柱の小さなスピン衛星から、30 mアンテナ、5 m・3 mマストを伸ばす。長さの違いは装飾ではなく、各センサを機体の電磁的な影響から離す測定設計だった。
長い展開物は「衛星から離れて測る」ため
高さ約1 m、対辺約1.26 mの八角柱本体に4枚の太陽電池パドルを備え、30 mアンテナ、5 mと3 mのマストを展開した。5 m先のフラックスゲート磁力計と3 m先のサーチコイルは、機体が作る磁気雑音からセンサを離す。長い電場・波動アンテナも、帯電する機体表面の近傍だけを測らないための構造である。
EFDは同じ量を2方式で測る
EFD-PのダブルプローブとEFD-Bのイオンビームは、電場を別々の原理で測る。片方から片方へ信号を渡す直列回路ではない。異なる誤差要因を持つ2方式を比較できるため、極域の弱いベクトル電場をより確かに判定できた。
粒子・波・場・光を共通時刻へ
MGF、EFD、VLF、PWS、LEP、SMS、TED、RDM、ATVは、それぞれ独立した観測器である。スピン位相、軌道位置、共通時刻を付けて記録することで、粒子加速が起きた瞬間の磁場・電場・波動と、オーロラ発光を後から重ねられる。
電力・姿勢・通信も測定系
太陽電池と電源系は観測器と通信へ電力を配り、スピン安定は粒子の到来方向とセンサの向きを決める。搭載記録とテレメトリは観測データだけでなく機器状態も地上へ送り、DARTSでは較正・軌道・姿勢情報とともに長期アーカイブとして公開されている。
07写真・図版
公式画像を使い、長いアンテナ構成と運用終了・再突入までの流れを日本語キャプションで補う。




08関連文献
あけぼのは初期成果と観測機器がDOI付き論文としてまとまっているため、公式ページとあわせて論文を参照できる。
- Introduction to the Akebono (EXOS-D) satellite observations
- Electric field measurement on the Akebono (EXOS-D) satellite
- Plasma wave observation and sounder experiments (PWS)
- Low energy charged particle observations in the auroral magnetosphere
- Studies of aurora dynamics by aurora-TV on the Akebono (EXOS-D) satellite