// Mars orbiter and lander · NASA / JPL · 1975-075A
バイキング1号
VIKING 1
バイキング1号は、火星周回機と着陸機を組み合わせたNASAの大型火星ミッション。火星表面に長期滞在し、画像、気象、土壌化学、生命検出実験までを行った。
01基本情報
火星を周回して着陸地点を選び、着陸機を降ろして表面を長期観測した複合探査機。
| 開発・運用 | NASA / Jet Propulsion Laboratory |
|---|---|
| 打上げ | 1975年8月20日 Titan IIIE-Centaur, Cape Canaveral |
| 火星到着 | 1976年6月 周回軌道投入 |
| 着陸 | 1976年7月20日 Chryse Planitia |
| 種類 | 火星周回機 / 火星着陸機 |
|---|---|
| 主目的 | 火星表面画像、気象、地質、土壌化学、生命検出実験 |
| 状態 | 成功・運用終了 |
| 国際標識番号 | 1975-075A |
02ミッション
バイキング1号は、火星を通り過ぎる対象から、地上実験を行う「場所」へ変えた。
周回機と着陸機の分業
バイキング1号は、まず火星を周回して候補地点を撮影し、着陸に適した場所を選んだ。着陸機は大気圏突入、パラシュート、逆噴射を経て地表へ降りた。周回機は観測だけでなく、通信中継と着陸地点選定の役割も持っていた。
火星に実験室を置く
着陸機はカメラ、気象センサ、土壌分析装置、生命検出実験を載せ、火星表面で直接測った。NASAは、バイキング1号が米国初の火星軟着陸成功であり、表面からの初の長期データを返したと説明している。
生命検出実験の難しさ
バイキングの生命実験は、土壌に栄養を与え反応を見るなど、微生物活動を想定したものだった。結果は簡単に「発見」でも「否定」でも片づけられず、火星土壌の化学的な反応性という問題を残した。生命探査は、問いの立て方そのものが難しい。
火星の長期気象観測
着陸機は日々の温度、風、気圧を測り、火星を一枚の写真ではなく、季節と天候を持つ環境として記録した。ローバー以前の火星表面科学の土台になった。
着陸地点選定から実験まで一つの系
バイキング1号は、周回機と着陸機を別々の成果として見るだけでは不十分である。周回機が候補地点を撮り、安全性を評価し、着陸機が降りた後は通信中継を担う。火星に実験室を置くため、軌道上の目と地上の手が一つのシステムになっていた。
生命検出実験は有名だが、その前提として滅菌、サンプル取得、土壌投入、温度管理、対照実験が必要だった。生命探査では、装置が反応を見るだけでなく、地球由来の汚染を避ける設計が科学結果そのものを守る。
- 1975-08-20打上げ火星へ向けて出発。
- 1976-06-19火星周回周回機が着陸地点選定を開始。
- 1976-07-04着陸予定を延期当初予定より安全な着陸地点確認を優先し、画像解析後に着陸日を変更した。
- 1976-07-20着陸Chryse Planitiaに軟着陸。
- 1976-07〜1977生命検出・土壌実験複数の生物実験と化学分析により、火星土壌の反応性を調べた。
- 1980着陸機をThomas Mutch記念ステーションへ火星表面で長期運用を続け、着陸機は後に記念名称で呼ばれた。
- 1982-11着陸機運用終了長期にわたり火星表面データを返した。
火星表面実験の出発点
バイキング1号は、火星を遠隔撮像の対象から、気象を測り、土壌を採り、化学反応を試す実験場所へ変えた。後の着陸機・ローバーはこの基準点の上にある。
03エピソード
バイキング1号は、火星を「そこに行って実験する場所」にした。
7月4日を捨て、着陸地を探し直す
Viking 1は米国独立200年の1976年7月4日に着陸する予定だった。ところが6月19日の火星周回投入後、周回機がChryse Planitiaの第一候補を撮ると、地上レーダーだけでは見抜けなかった粗い地形が現れた。記念日に合わせれば脚やレーダーが危険になるため、NASA/JPLは着陸を延期して画像を調べ直した。その結果、7月20日に選び直した地点へ安全に降り、同日から地上画像と気象・化学観測を始められた。
反応した培養器と、見つからない有機物
1976年7月28日からViking 1は火星土壌を三系統の生命検出装置とGCMSへ分けた。標識放出実験LRは放射性炭素を含む気体がすぐ出る反応を示し、加熱滅菌した対照試料では反応が弱まった。一方、GCMSは約10〜100 ppbの検出限界で有機物を確認できず、他の培養系も微生物だけに固有とは言えない化学応答だった。滅菌対照、土壌酸化反応、装置感度のどれでも一部を説明できたため、NASAは生命発見と断定せず「明確な証拠なし」とした。この非決着が、後続探査で地質・有機化学の文脈を先に測る判断につながった。
一つの誤コマンドから、二度と返事が来ない
着陸から6年以上後の1982年11月11日、Viking 1 landerは地上からの誤ったコマンド後に通信を失った。原因を確かめる新しいテレメトリ自体が届かないため、NASA/JPLはアンテナ指向や送信状態を仮定した回復命令を繰り返した。1983年4月27日にはGoldstoneの64 mアンテナで送信せず受信だけを続け、弱い信号も探したが応答はなかった。その結果、偶発的な地上操作が9年目を待たず固定局の任務を終え、コマンド検証と安全化を別系統で確認する必要を具体的に残した。
04軌道
左では周回機が約1か月の着陸地点偵察を重ね、着陸機の分離後も火星周回を続ける。着陸機だけが周回方向に接する弧で離軌道し、右の別縮尺では大気圏突入から着陸までを追う。
05搭載機器
着陸機カメラ
火星表面、空、機体周辺、サンプル取得場所を撮像した。
生命検出実験
土壌の反応を複数の実験で調べ、微生物活動の可能性を検証した。
気象観測
温度、気圧、風を長期測定し、火星表面環境を記録した。
周回機観測装置
着陸地点選定、火星地形、通信中継を担った。
06設計
バイキング1号は、火星を広く調べる周回機と、1地点を長期観測する着陸機を組み合わせた複合探査機。両機の外形と、分離後に分かれる電力・観測・通信の役割を実際の搭載位置に沿って読む。
図の作図根拠: NASA Science — Viking 1 / NASA NSSDCA — Viking 1 Orbiter / NASA NSSDCA — Viking 1 Lander
分離後に役割を分ける
周回機は着陸候補地の撮像から着陸機のUHF中継、火星全体の科学観測まで担当する。着陸機は安全に分離・突入した後、固定した同一地点で表面環境を長く測る。
着陸システム
エアロシェルと耐熱シールドが高速突入を受け、パラシュートとレーダー高度計に続いて3基のエンジが終端降下を行う。着地後は3本脚が機体を支える。
表面実験室
2基のRTGが電力を供給し、カメラと気象センサーが周囲を測る。サンプラーアームは土壌を機内の生物学実験、ガスクロマトグラフ質量分析、X線蛍光分析に取り込む。
07写真・図版
NASA/Commons画像で、バイキング機体と火星表面の実画像を確認する。


08関連文献
Viking 1は公式資料に加え、火星着陸、画像、生命検出実験、着陸地点地質がDOI付き論文で残っている。ここでは着陸機の成果を読む代表論文を置く。
- The First Viking Mission to Mars
- The Viking Lander Imaging Investigation: An introduction
- The Viking Biological Investigation: Preliminary Results
- Geology of Chryse Planitia