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// 海洋・陸域観測 · 2016-011A

Sentinel-3A
Sentinel-3A

海洋と陸域を光学・熱・高度計で同時に測り、Copernicusの全球環境監視を定常化した。

21band
OLCI
9view/band
SLSTR
27
軌道回帰
運用中🌐 欧州 / ESA / EUMETSAT / EU海洋・陸域観測

01基本情報

打ち上げ、機体、軌道、運用の主要諸元。数値だけでなく任務上の役割を併記する。

開発・運用欧州 ESA / EUMETSAT / EU
打ち上げ2016年02月16日 Plesetsk
ロケットRokot
国際標識2016-011A
状態運用中
質量約1,150 kg
軌道・航路高度約814.5 km太陽同期
電源太陽電池
設計形式earth-observer
主要目標海色・地表温度・海面高度

02ミッション

海色・地表温度・海面高度を、要求・機体・軌道・運用判断・遺産の五層から読む。

何を変えるための飛行だったか

海色、海面温度、海面高度、陸域植生・火災を短い再訪で全球提供することが目的である。 Sentinel-3Aを理解する出発点は、打ち上げ年や機体サイズではなく、当時まだ測れなかった量、成立していなかった運用、あるいは越えられていなかった距離を特定することにある。中心課題は「海色・地表温度・海面高度」。その要求は観測装置だけで完結せず、軌道、電力、通信、熱、地上系を同時に縛った。

代表値の21 band(OLCI)、9 view/band(SLSTR)、27 日(軌道回帰)は、単なる記録ではない。どの局面へ設計余裕を配分したかを示す手掛かりである。海洋と陸域を光学・熱・高度計で同時に測り、Copernicusの全球環境監視を定常化した。 本ページでは成果だけでなく、その成果を可能にした判断の連鎖まで追う。

要求を機体へ落とし込む

OLCI、SLSTR、SRAL、MWR、精密軌道系を大型地球指向バスへ統合した。 機体は約1,150 kg、電源は太陽電池。主要構成のOLCI(海陸色観測器)、SLSTR(海陸表面温度放射計)、SRAL(合成開口レーダ高度計)は独立した部品ではなく、観測または運用の要求をデータへ変え、保存し、地上へ渡す一本の経路を作る。MWR(マイクロ波放射計)はその途中で姿勢・環境・相対位置の条件を整える。

さらにDORIS(精密軌道決定)とX-BAND(高率通信系)を組み合わせることで、一つの故障がただちに全任務へ波及しないよう機能を分担した。重量や消費電力を増やせば安全になるとは限らず、打上げ能力、放熱面積、指向精度、通信時間との交換になる。Sentinel-3Aの設計は、限られた資源を任務の決定的瞬間へ集中させた結果として読むべきである。

軌道は移動経路ではなく実験装置

双衛星コンステレーションとして地球を反復し、海洋業務はEUMETSAT、陸域はESA系で処理する。 地球周回では高度だけでなく、軌道傾斜角、昇交点の向き、地方時、地上局可視時間が観測と通信を決める。投入後は姿勢確立、太陽電池展開、初期捕捉、軌道補正を順に行い、定常運用の地上軌跡へ収束させる。図では地球自転と衛星公転を別周期で動かし、同じ地点の上に静止しているように見えない実際の関係を表した。

打上げにはRokotを使い、Plesetskから高度約814.5 km太陽同期へ入った。2016の「初期運用」から2026の「継続運用」まで、軌道変更は観測の前準備ではなくミッションそのものだった。下のアニメーションでは、主要天体の運動、遷移航路、目的地近傍の運用を意図的に別速度で示している。

運用現場で何を判断したか

光学・熱・高度計の異なる観測幅と較正を、共通軌道・時刻・検証サイトで結びつける。 実際の運用では、取得したテレメトリを正常・異常の二値に分けるだけでは足りない。姿勢誤差、電池残量、温度、通信余裕、推進剤、次の可視時間を並べ、今すぐ続行する価値と安全側へ戻る価値を比較する。自動シーケンスは通信遅延を埋める一方、誤った前提のまま進む危険も持つため、停止条件と地上復帰点が設計された。

双衛星で再訪を短縮。 この一局面を成立させたのは、個別装置の性能より、時刻基準と状態遷移を全系で共有したことだった。観測機なら較正と指向、通信衛星なら回線と姿勢、有人機なら生命維持と退避経路、探査機なら自律航法とセーフモードが判断軸になる。Sentinel-3Aの運用史は、設計図では見えない余裕の使い方を記録している。

残ったデータと設計遺産

海洋予報、藻類、火災、氷、河川湖沼の長期プロダクトを日常運用し、Sentinel-3系列の基準機となった。 成果は発表時の新規性だけでなく、後年の再解析、後継機との比較、規格や訓練の変更に耐えるかで価値が決まる。Sentinel-3Aが残したものは、観測値、運用ログ、軌道決定値、故障時の判断、製作試験の記録を結び付けた参照系である。

後継計画は同じ機体を再現するのではなく、OLCI(海陸色観測器)で得た能力を更新し、DORIS(精密軌道決定)で見えた制約を別の技術で解く。成功した任務も、終了・失敗した任務も、どの前提が正しくどの余裕が不足したかを具体化した点で次の設計に効く。一次資料とアーカイブを併記したのは、物語だけでなく検証可能な記録へ戻れるようにするためである。

ESA — Sentinel-3、NASA Technical Reports Server、NASA Earthdata Searchを突き合わせると、2016年02月16日の打上げから2026の「継続運用」までが、単なる出来事の列ではなく、要求、実装、軌道上判断、成果公開の因果関係として読める。本文では確定した事実と後年の評価を混同せず、数値には対象と条件を添えた。図も同じ原則で、距離や天体寸法を実寸比例にはせず、海色・地表温度・海面高度に必要だった遷移、会合、観測区間の順序を優先している。したがってSentinel-3Aの価値は「飛んだか」だけではなく、どの設計仮説が実運用で支持され、どの不確かさが次の計画へ持ち越されたかまで追跡して初めて見えてくる。

  1. 開発期
    要求と方式の確定
    海色、海面温度、海面高度、陸域植生・火災を短い再訪で全球提供することが目的である。
  2. 2016-02-16
    打上げ
    Rokotで高度約814.5 km太陽同期へ投入。
  3. 2016-02-16
    初期機能確認
    海陸色観測器と海陸表面温度放射計を立ち上げ、電力・熱・通信・姿勢の基準状態を確立。
  4. 2016
    初期運用
    海洋・陸域プロダクトを較正。
  5. 2018
    Sentinel-3B合流
    双衛星で再訪を短縮。
  6. 2026
    継続運用
    Copernicus全球環境監視を継続。
  7. 現在
    成果の継承
    海洋予報、藻類、火災、氷、河川湖沼の長期プロダクトを日常運用し、Sentinel-3系列の基準機となった。

03開発・運用エピソード

延期と二機同時校正から、定常観測の精度を作る現場を追う。

射場の再認証を待って、燃料を入れる

Sentinel-3Aは当初2016年2月4日の打上げを予定していたが、プレセツク射場の発射台再認証が終わらず2月16日へ延期された。衛星は完成していても、日程が正式に固まる前に毒性のあるヒドラジンを充填すれば作業と保管の自由度を失う。ESA側は射場確認を待って1月末に推進剤を入れ、2月16日に打上げた。分離から92分後に最初の信号を受け、設備側の不確実性を衛星側へ持ち込まず初期運用へ入った。

秒速7.4 kmで、30秒差の同じ海を見る

2018年6月、ESAは後発のSentinel-3Bを3Aの約30秒、223 km後方へ置き、秒速7.4 kmでほぼ同じ地表を通す四か月のタンデム飛行を始めた。別々の時刻に測れば海面や雲自体の変化と機器差を分離できないため、二機を意図的に近接させたのである。同じ対象をほぼ同条件で比較して光学・熱・高度計の偏差を絞った後、3Bを140度離れた運用位置へ移し、再訪頻度と渦の追跡能力を高めた。

04軌道・遷移

地球周回では高度だけでなく、軌道傾斜角、昇交点の向き、地方時、地上局可視時間が観測と通信を決める。投入後は姿勢確立、太陽電池展開、初期捕捉、軌道補正を順に行い、定常運用の地上軌跡へ収束させる。図では地球自転と衛星公転を別周期で動かし、同じ地点の上に静止しているように見えない実際の関係を表した。

Sentinel-3Aの軌道・遷移アニメーション 海色・地表温度・海面高度に至る主要局面を模式化。距離と周期は読みやすさのため誇張。 SENTINEL-3A / MISSION TRAJECTORY 地球 Sentinel-3A — 高度約814.5 km太陽同期 軌道形状は投影模式図。高楕円では地球を焦点に配置 天体サイズ・距離・時間は運用局面を見やすくするため模式化
  1. 01要求と方式の確定開発期 · 海色、海面温度、海面高度、陸域植生・火災を短い再訪で全球提供することが目的である。
  2. 02打上げ2016-02-16 · Rokotで高度約814.5 km太陽同期へ投入。
  3. 03初期機能確認2016-02-16 · 海陸色観測器と海陸表面温度放射計を立ち上げ、電力・熱・通信・姿勢の基準状態を確立。
  4. 04初期運用2016 · 海洋・陸域プロダクトを較正。
  5. 05Sentinel-3B合流2018 · 双衛星で再訪を短縮。
  6. 06継続運用2026 · Copernicus全球環境監視を継続。
  7. 07成果の継承現在 · 海洋予報、藻類、火災、氷、河川湖沼の長期プロダクトを日常運用し、Sentinel-3系列の基準機となった。

05主要機器・サブシステム

任務を実際に成立させた六つ以上の固有コンポーネント。

OLCI

海陸色観測器

21波長で海色・植生を観測。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

SLSTR

海陸表面温度放射計

二視線で温度を高精度補正。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

SRAL

合成開口レーダ高度計

海面・氷・内水面高度を測定。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

MWR

マイクロ波放射計

高度計の水蒸気補正。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

DORIS

精密軌道決定

高度計位置を精密化。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

X-BAND

高率通信系

全球観測データを送信。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

06機体設計と海洋複合観測系

Sentinel-3Aは、広い光学観測を担うOLCI・SLSTRと、直下の高さを測るSRAL・MWRを同じ地球指向面へ収める。色・温度・高さを相補的に測る配置である。

Sentinel-3Aの単翼太陽電池、OLCI、SLSTR、SRAL、MWR左へ展開した太陽電池翼、箱形機体の地球指向側にある五眼OLCI、二方向を見るSLSTR、天底向きSRALアンテナとMWRを示す。 SENTINEL-3A / COLOUR + TEMPERATURE + TOPOGRAPHY OLCI · 5 CAMERA MODULES SLSTR NADIR / OBLIQUE SRAL Ku/CMWR 単翼太陽電池アレイOLCI · 21帯域 / 1270 km幅SLSTR · 直下+斜め二方向SRAL · 天底レーダ高度計MWR · 水蒸気補正 CO-LOCATED FOOTPRINTSOLCISLSTRSRAL/MWR直下点 光学の広域面と高度計の直下線を同じ軌道で結ぶ

色を21帯域で分ける

OLCIは5台のカメラモジュールで400–1020 nmを21帯域に分光し、1270 km幅を300 mで観測する。海色、植生、エアロゾルを同じ光学系で捉える。

二方向で表面温度を補正

SLSTRは同じ地表を直下と斜めの二方向から見て、大気の影響を分離する。可視〜熱赤外9帯域で海・陸の表面温度と火災を測る。

高さはレーダと水蒸気補正の組

SRALはKu/C帯のパルス往復時間から海面・氷・内水面の高さを測る。MWRが23.8/36.5 GHzで水蒸気量を求め、レーダ伝搬遅延を補正する。

08一次資料・技術文献

仕様、軌道、運用史、データへ戻るための代表的な入口。