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// 能動通信 · 1962-068A

Relay 1
Relay 1

楕円軌道から広帯域中継器を使い、米欧間テレビ伝送と日本向け衛星中継の初期実験を担った。

25MHz
中継帯域
11W
送信出力
78kg
質量
運用終了🇺🇸 米国 / NASA能動通信

01基本情報

打ち上げ、機体、軌道、運用の主要諸元。数値だけでなく任務上の役割を併記する。

開発・運用米国 NASA
打ち上げ1962年12月13日 Cape Canaveral
ロケットDelta B
国際標識1962-068A
状態運用終了
質量約78 kg
軌道・航路約1,300×7,400 km楕円軌道
電源太陽電池
設計形式relay
主要目標大西洋横断テレビ・電話中継

02ミッション

大西洋横断テレビ・電話中継を、要求・機体・軌道・運用判断・遺産の五層から読む。

何を変えるための飛行だったか

低軌道能動中継器でテレビ・電話・データを大陸間伝送し、地上局と衛星の回線設計を実測することが目的だった。 Relay 1を理解する出発点は、打ち上げ年や機体サイズではなく、当時まだ測れなかった量、成立していなかった運用、あるいは越えられていなかった距離を特定することにある。中心課題は「大西洋横断テレビ・電話中継」。その要求は観測装置だけで完結せず、軌道、電力、通信、熱、地上系を同時に縛った。

代表値の25 MHz(中継帯域)、11 W(送信出力)、78 kg(質量)は、単なる記録ではない。どの局面へ設計余裕を配分したかを示す手掛かりである。楕円軌道から広帯域中継器を使い、米欧間テレビ伝送と日本向け衛星中継の初期実験を担った。 本ページでは成果だけでなく、その成果を可能にした判断の連鎖まで追う。

要求を機体へ落とし込む

4 GHz受信、4170 MHz送信の広帯域トランスポンダと冗長通信系を太陽電池バスへ載せた。 機体は約78 kg、電源は太陽電池。主要構成のRX(4 GHz受信機)、CONV(周波数変換器)、TWT(進行波管増幅器)は独立した部品ではなく、観測または運用の要求をデータへ変え、保存し、地上へ渡す一本の経路を作る。TX(4.17 GHz送信系)はその途中で姿勢・環境・相対位置の条件を整える。

さらにANT(中継アンテナ)とEPS(電源調整器)を組み合わせることで、一つの故障がただちに全任務へ波及しないよう機能を分担した。重量や消費電力を増やせば安全になるとは限らず、打上げ能力、放熱面積、指向精度、通信時間との交換になる。Relay 1の設計は、限られた資源を任務の決定的瞬間へ集中させた結果として読むべきである。

軌道は移動経路ではなく実験装置

衛星可視時間を予報し、送受信地上局が追尾アンテナ・周波数・番組時刻を同期した。 地球周回の形と向きそのものがサービス範囲を決める。遷移軌道の近地点で速度を得て遠地点を持ち上げ、遠地点側の噴射で目的周期と傾斜角へ整える。楕円軌道では遠地点付近の滞在時間が長くなり、静止軌道では地球自転と周期を一致させる。図では投入軌道と運用軌道を分け、移行中の機体を動かした。

打上げにはDelta Bを使い、Cape Canaveralから約1,300×7,400 km楕円軌道へ入った。1963の「大西洋中継」から1965の「運用終了」まで、軌道変更は観測の前準備ではなくミッションそのものだった。下のアニメーションでは、主要天体の運動、遷移航路、目的地近傍の運用を意図的に別速度で示している。

運用現場で何を判断したか

電源調整器故障で高電圧が通信系へ影響したため、運用休止と再起動を繰り返した。 実際の運用では、取得したテレメトリを正常・異常の二値に分けるだけでは足りない。姿勢誤差、電池残量、温度、通信余裕、推進剤、次の可視時間を並べ、今すぐ続行する価値と安全側へ戻る価値を比較する。自動シーケンスは通信遅延を埋める一方、誤った前提のまま進む危険も持つため、停止条件と地上復帰点が設計された。

太平洋側実験で歴史的ニュース映像を伝送。 この一局面を成立させたのは、個別装置の性能より、時刻基準と状態遷移を全系で共有したことだった。観測機なら較正と指向、通信衛星なら回線と姿勢、有人機なら生命維持と退避経路、探査機なら自律航法とセーフモードが判断軸になる。Relay 1の運用史は、設計図では見えない余裕の使い方を記録している。

残ったデータと設計遺産

東京五輪前夜の国際中継を含む実験が、商用通信衛星のリンク予算と運用手順を具体化した。 成果は発表時の新規性だけでなく、後年の再解析、後継機との比較、規格や訓練の変更に耐えるかで価値が決まる。Relay 1が残したものは、観測値、運用ログ、軌道決定値、故障時の判断、製作試験の記録を結び付けた参照系である。

後継計画は同じ機体を再現するのではなく、RX(4 GHz受信機)で得た能力を更新し、ANT(中継アンテナ)で見えた制約を別の技術で解く。成功した任務も、終了・失敗した任務も、どの前提が正しくどの余裕が不足したかを具体化した点で次の設計に効く。一次資料とアーカイブを併記したのは、物語だけでなく検証可能な記録へ戻れるようにするためである。

NASA NTRS — Relay Satellite、NASA Technical Reports Server、NASA Earthdata Searchを突き合わせると、1962年12月13日の打上げから1965の「運用終了」までが、単なる出来事の列ではなく、要求、実装、軌道上判断、成果公開の因果関係として読める。本文では確定した事実と後年の評価を混同せず、数値には対象と条件を添えた。図も同じ原則で、距離や天体寸法を実寸比例にはせず、大西洋横断テレビ・電話中継に必要だった遷移、会合、観測区間の順序を優先している。したがってRelay 1の価値は「飛んだか」だけではなく、どの設計仮説が実運用で支持され、どの不確かさが次の計画へ持ち越されたかまで追跡して初めて見えてくる。

  1. 開発期
    要求と方式の確定
    低軌道能動中継器でテレビ・電話・データを大陸間伝送し、地上局と衛星の回線設計を実測することが目的だった。
  2. 1962-12-13
    打上げ
    Delta Bで約1,300×7,400 km楕円軌道へ投入。
  3. 1962-12-13
    初期機能確認
    4 GHz受信機と周波数変換器を立ち上げ、電力・熱・通信・姿勢の基準状態を確立。
  4. 1963
    大西洋中継
    テレビ・音声伝送を反復。
  5. 1963-11
    日米中継
    太平洋側実験で歴史的ニュース映像を伝送。
  6. 1965
    運用終了
    通信故障と軌道劣化で実験完了。
  7. 飛行後
    成果の継承
    東京五輪前夜の国際中継を含む実験が、商用通信衛星のリンク予算と運用手順を具体化した。

03開発・運用エピソード

故障後の熱・電力運用と、短い太平洋passが運んだ出来事を技術報告から読む。

電源調整器の異常を、温度を選ぶ通信運用へ変える

1962年12月13日に打ち上げられたRelay 1では、電源regulatorの異常でbus電圧と機器温度が想定範囲を外れ、広帯域中継器を連続運転できなくなった。交換できない軌道上機を捨てる代わりに、NASAの運用teamは電圧・温度telemetryを追い、機器が許容状態へ戻る軌道区間と負荷だけを選んで再起動する手順を組んだ。1963年1月3日以降、限られた可視時間へ通信実験を集中させ、大西洋横断のtelevision、telephone、data中継を成立させた。故障を消したのではなく、熱と電力の条件を運用窓へ変えた回復だった。

十一回の太平洋passが、予定番組を歴史的newsへ変える

1963年11月、Relay 1を使う日米最初期のtelevision中継では、楕円軌道のため一回の可視時間が短く、米国と日本の地上局は使える11回のpassごとに追尾、周波数、番組時刻を合わせた。11月22日の試験はKennedy大統領に関する予定映像を送るはずだったが、暗殺の報が入り、回線は急きょnews伝送へ使われた。電源regulator異常を抱える衛星でも、温度と電力が許すpassだけを選び、地上局が毎回再捕捉する運用を整えていたため、太平洋を越える生の出来事を同日に届けられた。技術実験が通信serviceの即応性を示した瞬間だった。

04軌道・遷移

地球周回の形と向きそのものがサービス範囲を決める。遷移軌道の近地点で速度を得て遠地点を持ち上げ、遠地点側の噴射で目的周期と傾斜角へ整える。楕円軌道では遠地点付近の滞在時間が長くなり、静止軌道では地球自転と周期を一致させる。図では投入軌道と運用軌道を分け、移行中の機体を動かした。

Relay 1の軌道・遷移アニメーション 大西洋横断テレビ・電話中継に至る主要局面を模式化。距離と周期は読みやすさのため誇張。 RELAY 1 / MISSION TRAJECTORY 地球は楕円の焦点/遠地点で低速 地球 Relay 1 — 約1,300×7,400 km楕円軌道 軌道形状は投影模式図。高楕円では地球を焦点に配置 天体サイズ・距離・時間は運用局面を見やすくするため模式化
  1. 01要求と方式の確定開発期 · 低軌道能動中継器でテレビ・電話・データを大陸間伝送し、地上局と衛星の回線設計を実測することが目的だった。
  2. 02打上げ1962-12-13 · Delta Bで約1,300×7,400 km楕円軌道へ投入。
  3. 03初期機能確認1962-12-13 · 4 GHz受信機と周波数変換器を立ち上げ、電力・熱・通信・姿勢の基準状態を確立。
  4. 04大西洋中継1963 · テレビ・音声伝送を反復。
  5. 05日米中継1963-11 · 太平洋側実験で歴史的ニュース映像を伝送。
  6. 06運用終了1965 · 通信故障と軌道劣化で実験完了。
  7. 07成果の継承飛行後 · 東京五輪前夜の国際中継を含む実験が、商用通信衛星のリンク予算と運用手順を具体化した。

05主要機器・サブシステム

任務を実際に成立させた六つ以上の固有コンポーネント。

RX

4 GHz受信機

地上局アップリンクを受信。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

CONV

周波数変換器

上り信号を下り帯へ変換。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

TWT

進行波管増幅器

広帯域信号を増幅。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

TX

4.17 GHz送信系

別大陸地上局へ再送。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

ANT

中継アンテナ

広い地球視野を確保。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

EPS

電源調整器

通信負荷へ安定電力を供給。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

06機体設計・スピン安定中継衛星

Relay 1を、太陽電池で覆われた八角柱と切頭八角錐、上端の18 in通信アンテナマスト、底部の追跡・テレメトリアンテナ、内部の広帯域中継器と電源区画から読む。

Relay 1の八角柱機体、切頭錐、通信アンテナ、太陽電池外皮、内部機器八角柱と切頭八角錐からなる外形、上端のマイクロ波送受信アンテナ、底部の追跡・テレメトリ用ホイップ、外面の太陽電池、切欠き内部の通信・電源・放射線実験機器を示す。 RELAY 1 / OCTAGONAL BODY · AXIAL ANTENNA RXIFTWTTXBAT マイクロ波送受信アンテナ18 inマスト上に配置 太陽電池外皮側面と切頭錐面を覆う 内部機器棚受信 → IF → TWT送信電源・テレメトリ・放射線実験 追跡・テレメトリ用アンテナ 上面から見た八角形スピン軸=アンテナ軸 フェアリングが八角形を決めた最大径29 inの八角柱+切頭八角錐Deltaの低抵抗ノーズ形状へ合わせる上下面以外を太陽電池で覆うアンテナをスピン軸へ置く上端マストが中継信号を送受信機体が回転してもアンテナ軸を保つ底部ホイップは追跡・制御を担当広帯域信号を機内で折り返す受信・IF変換・TWT増幅・送信電話・テレビ・テレタイプを中継放射線計測と機器状態もテレメトリ化

作図根拠: NASA NTRS — The Relay Spacecraft / NASA NTRS — Relay I Spacecraft Performance / Smithsonian NASM — Relay 1 Communications Satellite

ロケットの包絡が機体外形になった

Deltaのノーズフェアリングへ収めるため、Relay 1は八角柱の上に切頭八角錐を重ねた。上下面を除く側面は太陽電池で覆い、回転中も照らされた面から電力を得た。

通信アンテナを回転軸へ合わせる

マイクロ波送受信アンテナを細い上端の18インチマストへまとめ、スピン軸とほぼ一致させた。底部から伸びるアンテナ群は追跡、テレメトリ、コマンドを受け持った。

外皮の内側に中継器を積む

受信した信号は中間周波数系を通り、進行波管で増幅して別周波数で送信された。電源、指令・テレメトリ、放射線実験も同じ八角形の内部棚へ収められた。

08一次資料・技術文献

仕様、軌道、運用史、データへ戻るための代表的な入口。