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// 静止気象 · 1977-108A

メテオサット1号
Meteosat 1

欧州初の静止気象衛星として、可視・赤外・水蒸気の三帯域で地球円盤を反復走査した。

3band
観測帯域
30min
円盤周期
100rpm
スピン速度
運用終了🌐 欧州 / ESA / EUMETSAT predecessors静止気象

01基本情報

打ち上げ、機体、軌道、運用の主要諸元。数値だけでなく任務上の役割を併記する。

開発・運用欧州 ESA / EUMETSAT predecessors
打ち上げ1977年11月23日 Cape Canaveral
ロケットDelta 2914
国際標識1977-108A
状態運用終了
質量約696 kg
軌道・航路本初子午線付近静止軌道
電源太陽電池
設計形式earth-observer
主要目標欧州・アフリカの連続雲観測

02ミッション

欧州・アフリカの連続雲観測を、要求・機体・軌道・運用判断・遺産の五層から読む。

何を変えるための飛行だったか

欧州・アフリカ・大西洋の雲と水蒸気を同じ視点から連続観測することが目的だった。 Meteosat 1を理解する出発点は、打ち上げ年や機体サイズではなく、当時まだ測れなかった量、成立していなかった運用、あるいは越えられていなかった距離を特定することにある。中心課題は「欧州・アフリカの連続雲観測」。その要求は観測装置だけで完結せず、軌道、電力、通信、熱、地上系を同時に縛った。

代表値の3 band(観測帯域)、30 min(円盤周期)、100 rpm(スピン速度)は、単なる記録ではない。どの局面へ設計余裕を配分したかを示す手掛かりである。欧州初の静止気象衛星として、可視・赤外・水蒸気の三帯域で地球円盤を反復走査した。 本ページでは成果だけでなく、その成果を可能にした判断の連鎖まで追う。

要求を機体へ落とし込む

スピン安定円筒バスに三帯域放射計を置き、回転を東西走査、鏡ステップを南北走査に使った。 機体は約696 kg、電源は太陽電池。主要構成のMVIRI(三帯域放射計)、SCAN(走査鏡)、SPIN(回転バス)は独立した部品ではなく、観測または運用の要求をデータへ変え、保存し、地上へ渡す一本の経路を作る。DCS(データ収集系)はその途中で姿勢・環境・相対位置の条件を整える。

さらにANT(地球指向アンテナ)とTHR(軌道保持系)を組み合わせることで、一つの故障がただちに全任務へ波及しないよう機能を分担した。重量や消費電力を増やせば安全になるとは限らず、打上げ能力、放熱面積、指向精度、通信時間との交換になる。Meteosat 1の設計は、限られた資源を任務の決定的瞬間へ集中させた結果として読むべきである。

軌道は移動経路ではなく実験装置

約30分ごとに円盤を完成し、地上局で幾何補正・温度変換・画像配信を行った。 地球周回の形と向きそのものがサービス範囲を決める。遷移軌道の近地点で速度を得て遠地点を持ち上げ、遠地点側の噴射で目的周期と傾斜角へ整える。楕円軌道では遠地点付近の滞在時間が長くなり、静止軌道では地球自転と周期を一致させる。図では投入軌道と運用軌道を分け、移行中の機体を動かした。

打上げにはDelta 2914を使い、Cape Canaveralから本初子午線付近静止軌道へ入った。1978の「画像配信」から1985の「運用終了」まで、軌道変更は観測の前準備ではなくミッションそのものだった。下のアニメーションでは、主要天体の運動、遷移航路、目的地近傍の運用を意図的に別速度で示している。

運用現場で何を判断したか

静止軌道保持とスピン走査の位相を監視し、三帯域の画素位置を一致させた。 実際の運用では、取得したテレメトリを正常・異常の二値に分けるだけでは足りない。姿勢誤差、電池残量、温度、通信余裕、推進剤、次の可視時間を並べ、今すぐ続行する価値と安全側へ戻る価値を比較する。自動シーケンスは通信遅延を埋める一方、誤った前提のまま進む危険も持つため、停止条件と地上復帰点が設計された。

後続機障害時も観測を支援。 この一局面を成立させたのは、個別装置の性能より、時刻基準と状態遷移を全系で共有したことだった。観測機なら較正と指向、通信衛星なら回線と姿勢、有人機なら生命維持と退避経路、探査機なら自律航法とセーフモードが判断軸になる。Meteosat 1の運用史は、設計図では見えない余裕の使い方を記録している。

残ったデータと設計遺産

欧州独自の静止気象運用とデータ共有を成立させ、EUMETSAT系列の起点となった。 成果は発表時の新規性だけでなく、後年の再解析、後継機との比較、規格や訓練の変更に耐えるかで価値が決まる。Meteosat 1が残したものは、観測値、運用ログ、軌道決定値、故障時の判断、製作試験の記録を結び付けた参照系である。

後継計画は同じ機体を再現するのではなく、MVIRI(三帯域放射計)で得た能力を更新し、ANT(地球指向アンテナ)で見えた制約を別の技術で解く。成功した任務も、終了・失敗した任務も、どの前提が正しくどの余裕が不足したかを具体化した点で次の設計に効く。一次資料とアーカイブを併記したのは、物語だけでなく検証可能な記録へ戻れるようにするためである。

ESA — A brief history of Meteosat、NASA Technical Reports Server、NASA Earthdata Searchを突き合わせると、1977年11月23日の打上げから1985の「運用終了」までが、単なる出来事の列ではなく、要求、実装、軌道上判断、成果公開の因果関係として読める。本文では確定した事実と後年の評価を混同せず、数値には対象と条件を添えた。図も同じ原則で、距離や天体寸法を実寸比例にはせず、欧州・アフリカの連続雲観測に必要だった遷移、会合、観測区間の順序を優先している。したがってMeteosat 1の価値は「飛んだか」だけではなく、どの設計仮説が実運用で支持され、どの不確かさが次の計画へ持ち越されたかまで追跡して初めて見えてくる。

  1. 開発期
    要求と方式の確定
    欧州・アフリカ・大西洋の雲と水蒸気を同じ視点から連続観測することが目的だった。
  2. 1977-11-23
    打上げ
    Delta 2914で本初子午線付近静止軌道へ投入。
  3. 1977-11-23
    初期機能確認
    三帯域放射計と走査鏡を立ち上げ、電力・熱・通信・姿勢の基準状態を確立。
  4. 1978
    画像配信
    欧州初の静止気象画像を運用提供。
  5. 1979
    計画継続
    後続機障害時も観測を支援。
  6. 1985
    運用終了
    Meteosat運用体系を後続へ移管。
  7. 飛行後
    成果の継承
    欧州独自の静止気象運用とデータ共有を成立させ、EUMETSAT系列の起点となった。

03開発・運用エピソード

初画像の遅れ、規則的な欠線、二年目の電源故障を、後継機の回路変更までつなげて読む。

打上げ十六日後、三つの波長が初めて同じ地球を描く

1977年11月23日13時35分GMTに打ち上げたMeteosat 1は、12月7日に静止運用位置へ到達し、12月9日に初画像を送った。可視と赤外だけでなく、地上から連続観測しにくい水蒸気帯を静止気象衛星へ初めて載せたため、三チャネルの走査・時刻・地上再構成を揃える必要があった。十六日をかけた立上げの結果、欧州・Africa・大西洋の全球円盤を約30分ごとに同じ視点で更新し、雲だけでなく乾湿域も予報へ渡す運用が始まった。

太陽パルスと時計が一致した瞬間だけ、画像線が消えた

初期画像では、いつも決まった時刻に数本の走査線が欠ける異常が現れた。地上試験では再現せず、機器故障なら不規則になるはずなのに、欠線は太陽を検出するspin pulseと地上で再構成したclockが同時になる瞬間へ集中した。ESAは二つの信号の偶然の一致が処理を競合させると切り分け、Meteosat 1は運用補正で画像を継続した。その結果、後継機にはanti-coincidence circuitが追加され、軌道上だけで現れた位相問題を回路設計へ戻した。

二年と一日で撮像停止、残ったデータ収集だけを生かす

1979年11月24日、打上げからちょうど二年と一日後、主電源系の電子breakerが発振し、保護回路をresetしても撮像負荷を戻せなくなった。全球画像という主目的は失われたが、地上の環境観測局を中継するData Collection Platform系は独立して動いたため、ESAは衛星全体を捨てずデータ収集任務へ縮退した。事故後、各breakerを迂回できる追加safeguardを後続Meteosatへ組み込み、一つの保護器が全画像系を固定する構成を改めた。

04軌道・遷移

地球周回の形と向きそのものがサービス範囲を決める。遷移軌道の近地点で速度を得て遠地点を持ち上げ、遠地点側の噴射で目的周期と傾斜角へ整える。楕円軌道では遠地点付近の滞在時間が長くなり、静止軌道では地球自転と周期を一致させる。図では投入軌道と運用軌道を分け、移行中の機体を動かした。

メテオサット1号の軌道・遷移アニメーション 欧州・アフリカの連続雲観測に至る主要局面を模式化。距離と周期は読みやすさのため誇張。 METEOSAT 1 / MISSION TRAJECTORY 地球 メテオサット1号 — 本初子午線付近静止軌道 軌道形状は投影模式図。高楕円では地球を焦点に配置 天体サイズ・距離・時間は運用局面を見やすくするため模式化
  1. 01要求と方式の確定開発期 · 欧州・アフリカ・大西洋の雲と水蒸気を同じ視点から連続観測することが目的だった。
  2. 02打上げ1977-11-23 · Delta 2914で本初子午線付近静止軌道へ投入。
  3. 03初期機能確認1977-11-23 · 三帯域放射計と走査鏡を立ち上げ、電力・熱・通信・姿勢の基準状態を確立。
  4. 04画像配信1978 · 欧州初の静止気象画像を運用提供。
  5. 05計画継続1979 · 後続機障害時も観測を支援。
  6. 06運用終了1985 · Meteosat運用体系を後続へ移管。
  7. 07成果の継承飛行後 · 欧州独自の静止気象運用とデータ共有を成立させ、EUMETSAT系列の起点となった。

05主要機器・サブシステム

任務を実際に成立させた六つ以上の固有コンポーネント。

MVIRI

三帯域放射計

可視・赤外・水蒸気を撮像。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

SCAN

走査鏡

南北方向を段階走査。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

SPIN

回転バス

東西走査と姿勢安定。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

DCS

データ収集系

環境プラットフォームを中継。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

ANT

地球指向アンテナ

画像・管制通信を形成。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

THR

軌道保持系

静止経度と傾斜を維持。他系統の時刻・姿勢・電力情報と結合して運用される。

06内部設計・機体構成

Meteosat 1は、太陽電池を巻いた円筒を毎分100回転させ、その回転をMVIRI放射計の東西走査へ直接利用した。機体・姿勢安定・撮像機構が一つのスキャナーとして働く。

Meteosat 1のスピン衛星外形とMVIRI走査太陽電池を貼った円筒機体、上部アンテナ、中心部のMVIRI放射計と走査鏡、推進部、および地球全円盤を線ごとに走査する仕組みを示す静的構成図。 METEOSAT 1 / SPIN-SCAN WEATHER SATELLITE機体の100 rpm回転が、そのまま画像の東西1ラインをつくる VIS / WVIR検出器MVIRI 円筒外周の太陽電池回転胴全体で受光通信・データ中継アンテナ上部プラットフォームに配置地球を見る開口回転ごとに視野が地球を横切る走査鏡と3帯域検出器可視・水蒸気・赤外アポジ / 軌道保持推進部円筒のスピン軸上に配置 MVIRI FULL-DISC SCAN 1回転 = 東西1ライン走査鏡を1段北へ送り、次のラインへ2500ライン / 25分 + 帰線5分 100 RPM SPIN BODY回転が姿勢安定と東西走査を兼任独立した横振り機構を増やさない設計 STEPPING MIRROR鏡を段階送りして南から北へ2500回転で地球全円盤を組み立てる THREE SPECTRAL BANDS可視・水蒸気・赤外を同じ走査で30分ごとに気象の全円盤画像を更新 外形と走査原理はESAおよびEUMETSATの初代Meteosat技術資料に基づく

機体全体が走査機構

Meteosat 1は円筒機体を毎分100回転させ、その回転でMVIRIの視野を地球の東から西へ横切らせた。太陽電池を外周へ巻く形、回転軸上の推進部、側面の観測開口は、スピン安定と撮像を同じ幾何で成立させる配置である。

1回転ずつ画像を積む

各回転で検出器が地球の東西1ラインを読み、走査鏡が次のラインへ段階的に移る。2500回転、約25分で南から北までを走査し、5分の帰線を含めて30分ごとに全円盤画像を更新した。

三つの帯域を同じ視野で

MVIRIは可視、赤外、水蒸気の三帯域を備えた。雲の外観、雲頂や地表の温度、大気中層の水蒸気分布を同じ全円盤走査から得られるため、欧州・アフリカ域の変化を継続的に比較できた。

一次資料: EUMETSAT — Meteosat Archive User Handbook / EUMETSAT — Meteosat First Generation / ESA Bulletin — Meteosat programme

08一次資料・技術文献

仕様、軌道、運用史、データへ戻るための代表的な入口。