// Long-term land imaging · NASA / USGS · 2021
Landsat 9
LANDSAT 9
Landsat 9は、1972年から続くLandsat地表観測の記録を引き継ぐ衛星。森林、農地、都市、水、火災跡を、同じ物差しで半世紀以上つなぐ。
01基本情報
Landsat 8と組んで同じ地点を8日ごとに見直し、地表変化の長期記録を更新する。
| 開発・運用 | NASA / USGS NASAが開発・打上げ、USGSが運用とデータ配布を担当 |
|---|---|
| 打上げ | 2021年9月27日 |
| 状態 | 運用中 |
| 役割 | 全球地表の継続観測 |
| 軌道 | 高度705 km 太陽同期、傾斜角98.2度 |
|---|---|
| 回帰 | 16日 Landsat 8との組み合わせで8日間隔 |
| 分解能 | 15 / 30 / 100 m バンドにより異なる |
| 観測幅 | 185 km |
02ミッション
Landsatの本当の価値は1枚の画像ではなく、同じ基準で蓄積された時間の厚みである。
変化を比較できる観測
森林伐採、都市化、湖の縮小、火災跡、農作物の状態は、単発画像では判断しにくい。Landsat 9は過去のLandsatと整合する観測を続け、1970年代からの地表変化を比較可能な記録にする。
Landsat 8との二機運用
Landsat 9はLandsat 8と軌道上で組み、同じ場所を8日ごとに観測できる。雲の多い熱帯林や農業地帯では、この頻度の差が実用性を大きく左右する。
無料公開データのインフラ
Landsatデータは科学研究だけでなく、行政、農業、水資源、災害対応、民間解析の基盤になっている。無料でよく較正されたデータが長く続くこと自体が、衛星の最大の成果である。
同じ場所を同じ物差しで見る
地球観測で難しいのは、センサが変わっても過去画像と比較できるようにすることである。Landsat 9はLandsat 8と近い観測設計を採り、過去のデータ列に自然に接続する。新しさを強調しすぎず、長期記録を壊さないことがこの衛星の美学である。
地表温度も地表変化の一部
OLI-2が土地被覆や植生を読み、TIRS-2が熱赤外で地表温度を測る。農業の水ストレス、都市ヒートアイランド、火災後の熱環境、水域の変化は、反射光だけではなく熱の情報と合わせることで立体的に分かる。
較正と互換性を守る衛星
Landsat 9の価値は、単に新しい画像を増やすことではなく、Landsat 8や過去ミッションと比較できる放射較正を保つことにある。農地や森林の変化量を数年から数十年で比べるには、センサが変わっても反射率や熱赤外の読みがつながっていなければならない。
地表観測の長期記録では、派手な分解能向上よりも、同じ場所を同じ条件で測り続けることが重要になる。Landsat 9は、研究者や行政が既存の処理体系を大きく変えずに利用できるよう、継続性を設計目標に含んでいる。
- 1972Landsat 1打上げ長期地表観測記録が始まる。
- 2013Landsat 8運用OLI/TIRSによる現代的な観測へ。
- 2021-09-27Landsat 9打上げLandsat 8と合わせた8日間隔観測を担う。
- 2021-10初期画像を取得打上げ後の機能確認で、沿岸、農地、山地などの初期画像が公開された。
- 2022USGS運用へ移行軌道上チェックアウト後、Landsat 9はUSGSによるデータ運用へ移った。
- 2022以降継続データ利用森林、水、農業、都市の変化解析に使われ続ける。
- 2022以降Landsat Nextへ接続Landsat 9は現行データ列を保ちながら、次世代計画までの観測継続を担う。
03エピソード
数字だけでは見えない判断、危機、発見の瞬間を一次資料と結び直す。
10月31日のfirst lightで、雲と雪を熱画像から分ける
2021年9月27日に打ち上げられたLandsat 9は、10月31日にAustralia北西岸、Himalaya、Ontarioなど最初の地球像を取得し、NASAとUSGSが11月5日に公開した。可視画像だけなら白い雪と雲、温室や裸地が似て見え、50年記録へ新機のdataを継ぐには二装置の幾何と波長を同時に確かめる必要がある。OLI-2の9帯域へTIRS-2の熱赤外2帯域を重ねると、冷たい雪・氷・高層雲と暖かい地表を温度で分離できた。美しい初画像を広報で終わらせず、光と熱が同じ場所を指すcommissioning証拠へした。
五日だけLandsat 8の真下を飛び、2,396組で物差しを渡す
Landsat 9は定常高度へ上がる途中の2021年11月12〜16日、Landsat 8の直下近くを通る一度限りのunderflyを行った。別日に同じ地表を比べると雲、照明、植生が変わり、sensor差と地球変化を分離できない。そこで両機は最大100%重なる11月14日を含む五日間に2,396画像をほぼ同時取得し、終盤にはLandsat 9をoff-nadir指向して重なりを増やした。得られたpaired dataからOLI同士の幾何・放射校正を更新し、green反射率約0.5%、cirrus放射輝度約5%級の補正まで定量化。新機を独立の眼でなく、旧機と同じ物差しへ結び付けた。
04太陽同期軌道・地表を同じ光で測る
Landsat 9は高度705 km、傾斜角98.2°の逆行・ほぼ極軌道を99分で一周する。昼側では北から南へ降り、赤道を地方太陽時10:12±5分に通過。地球が下で回るため観測帯が西へずれ、233周・16日で同じWRS-2経路へ戻る。
- 01 / 2021-09-27Atlas V 401で打上げVandenbergから南向きに上昇し、極軌道へ直接投入。分離後に太陽電池を展開した。
- 02 / SEP–JAN100日オンオービット試験姿勢・推進・記録・地上局通信を確認し、OLI-2とTIRS-2を立ち上げて初画像を取得した。
- 03 / 2021-12最終軌道へ上昇精密だった投入を生かし、705 kmのWRS-2軌道とLandsat 8に対する位相を整えた。
- 04 / 99 MIN昼側を北から南へ降交点10:12ごろにOLI-2とTIRS-2が185 km幅を同時にプッシュブルーム観測する。
- 05 / 8 DAYSLandsat 8が間を埋める二機を8日ずらして配置し、同じ場所を一機16日、二機体制で8日間隔にした。
- 06 / 16 DAYS同じWRS-2パスへ回帰同じ地方時・同じ経路の較正済み画像を積み重ね、50年以上の変化を比較可能にする。
05搭載機器
OLI-2
可視、近赤外、短波赤外を測る主センサ。14-bitデータで明暗差をより細かく取る。
TIRS-2
熱赤外で地表温度を測り、水利用、都市熱、火災後の解析にも効く。
全球参照格子
同じパス・ロウで長期比較できるよう、観測位置を体系化する。
06内部設計・較正を含む観測系
OLI-2とTIRS-2は同じ地表帯を同時にプッシュブルーム観測するが、反射光と熱放射では光学・検出器・較正方法が違う。二本の独立した観測系を、時刻・姿勢・記録・地上処理で一つのLandsatシーンへそろえる。
OLI-2は九つの反射帯を一列で読む
OLI-2は地表から来る可視・近赤外・短波赤外光を四枚の鏡で焦点面へ導き、プッシュブルーム方式の検出器列で進行方向と直交する185 km幅を一度に読む。九つの分光帯は30 m、パンクロマチック帯は15 m。内部ランプ、太陽拡散板、月観測で放射応答を追跡し、14-bitの16,384階調を地上まで保持する。暗い沿岸水や森林の小さな明暗差を、過去のLandsatと比較できる形で残すための設計である。
TIRS-2は熱と較正源を交互に見る
TIRS-2は10.6–12.51 µmの二つの熱赤外帯で地表からの熱放射を100 mで測る。Earth viewに加え、温度が分かる内部黒体と冷たい深宇宙を見て、検出器出力を放射輝度へ結び付ける。Landsat 8のTIRSで判明した迷光を抑えるバッフル・光学改修を行い、冗長性を増やしてClass B・5年設計へ引き上げた。OLI-2の反射率と同じシーンへ重ねることで、水利用、蒸発散、火災、都市熱を読み分ける。
独立した二機器を一つの時空間へそろえる
OLI-2とTIRS-2は独立した光学系・焦点面・電子系で同じ地表帯を同時取得し、それぞれのデータをPayload Data SystemとSolid State Recorderへ並列に送る。GPS時刻、軌道決定、星追跡器、リアクションホイールが視線と撮像時刻を支え、地上処理で幾何・放射較正を合わせる。異なる波長を「同じ場所・同じ瞬間」の11バンド製品として扱えることがシステム統合の成果である。
Xバンドは画像、Sバンドは運用を運ぶ
大量の科学データは固体記録装置へ蓄え、可視時間にXバンドでSioux Falls、Svalbard、Alice SpringsなどのLandsat Ground Networkへ送る。Sバンドはコマンド、テレメトリ、機体の健全性確認を担う。受信データはUSGS EROSのData Processing and Archive Systemへ入り、Collection 2とWRS-2のパス・ロウへ整理されて無償公開される。衛星の観測幅と16日回帰は、この地上参照格子・較正履歴・配布基盤と組み合わさって初めて長期記録になる。
電力・姿勢・推進が同じ地表帯を守る
展開式太陽電池とバッテリーは日照・食をまたいで二機器、記録、通信、熱制御へ給電する。三軸姿勢制御はナディアを向く観測面を安定させ、推進系は16日後に同じWRS-2パスへ戻る軌道を保つ。打上げ投入が非常に精密だったため、初期の軌道修正燃料を節約でき、10年要求を超える消耗品余裕が得られた。分解能だけでなく、毎回ほぼ同じ視線・地方時・経路へ戻る再現性がLandsat 9の性能である。
「新しさ」より50年の互換性を優先した
Landsat 9はLandsat 8のLEOStar系バス、OLI、TIRSを基礎にし、既知の弱点とデータ量を重点改良した。OLI-2は14-bitを地上まで保持し、TIRS-2は迷光対策と冗長化を入れた一方、分光帯、解像度、観測幅、WRS-2、太陽同期時刻は大きく変えない。森林減少や湖面、都市拡大を数十年で比べる用途では、性能値を一度だけ伸ばすより、過去データへ較正可能につながること自体が最も重要な設計要件だからである。
07写真・図版
NASA/USGS公式画像で、打上げ前の機体と地上処理前の準備を確認する。


08関連文献
Landsat 9の公式諸元はNASA/USGSで確認しつつ、センサ設計と校正はDOI付き論文で追う。ここではOLI-2/TIRS-2とLandsatデータ継承に関わる資料を置く。
- Landsat 9 Thermal Infrared Sensor 2 Architecture and Design
- Landsat 9 Thermal Infrared Sensor 2 Characterization Plan Overview
- Early radiometric performance of Landsat-9 Thermal Infrared Sensor
- Landsat 9 thermal infrared sensor 2 (TIRS-2) radiometric calibration and potential future Landsat thermal band efforts