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// 木星圏へ巡航中 · ESA · 2023-053A

JUICE
Jupiter Icy Moons Explorer

世界初の月・地球連続重力アシストと金星フライバイを完了し、現在は2026年9月28日の地球フライバイへ向けて巡航中。2031年の木星周回投入後、35回の氷衛星フライバイを経て、2034年にガニメデ周回へ移る。

2/4
巡航アシスト工程完了
2031-07
木星到着予定
35
氷衛星フライバイ予定
地球フライバイ接近フェーズ🌐 ESA / NASA / JAXA / ISA情報基準 2026-08-21

01基本情報

完了した月・地球連続重力アシストと金星フライバイ、これから行う地球接近・木星到着・ガニメデ周回を分けて示す。

開発・運用ESA主導 NASA、JAXA、イスラエル宇宙局が参加
打上げ2023年4月14日 12:14 UTC Ariane 5、クールー
質量湿潤約6,000 kg / 乾燥約2,400 kg
完了済み2024年月・地球連続重力アシスト / 2025年金星フライバイ
現在の状態地球フライバイ接近巡航 情報基準 2026年8月21日
次の予定地球 2026年9月28日 / 2029年1月17日
木星到着予定2031年7月 約1 km/s減速、約13時間前のガニメデ重力アシストを利用
木星系ツアー35回 ガニメデ12 / カリスト21 / エウロパ2
ガニメデ投入予定2034年12月 最終的に高度200 km円軌道へ
電力・通信太陽電池85 m² / 木星で約820 W / 2.5 m X・Ka帯HGA

02ミッション

月・地球・金星の重力で木星への到着条件を整え、木星到着後は氷衛星との遭遇を重ねてガニメデ周回へ移る。

月・地球連続重力アシストで金星へ向かう

2024年8月19日の月フライバイで太陽相対速度を0.9 km/s増やし、約24時間後の地球フライバイで4.8 km/s減速して金星へ進路を曲げた。二つの天体を一つの連続操作として使い、推進剤100〜150 kg相当を節約しながら木星到着後の観測余力を守った。

35回の衛星接近でガニメデ周回条件を整える

2031年7月、ガニメデ接近の約13時間後に主エンジンで約1 km/s減速し、接線速度を保って木星周回へ入る。その後はガニメデ12回、カリスト21回、エウロパ2回のフライバイを使い、観測と並行して軌道エネルギーと傾斜を調整する。2034年12月にガニメデへ捕獲され、高度5,000 km、500 km、200 kmの観測軌道へ段階的に移る計画である。

2026年8月21日時点では、月・地球連続重力アシストと金星フライバイが完了し、次の地球接近は2026年9月28日に予定されている。

  1. 2023-04-14
    打上げ
    Ariane 5でクールーから出発。
  2. 2023-05-12
    RIME完全展開
    非爆発式アクチュエータ(NEA)の衝撃で拘束ピンを動かし、16 mアンテナを解放。
  3. 2024-08-19 / 20
    世界初の月・地球連続重力アシスト
    月21:15 UTC、地球21:56 UTC。二天体を連続して通過。
  4. 2025-08-31
    金星フライバイ
    通信異常から復旧後に成功。HGAを熱シールドとして運用。
  5. 2026-09-28 予定
    地球フライバイ
    高度8,640 kmを通過し、木星遷移の速度と方向を調整。
  6. 2029-01-17 予定
    最後の地球フライバイ
    2031年7月の木星会合軌道へ送り出す。
  7. 2031-01 予定
    接近科学開始
    木星周回投入のおよそ6か月前から観測開始。
  8. 2031-07 予定
    ガニメデ支援 → 木星周回投入
    ガニメデ接近の約13時間後、約1 km/s減速して木星へ捕獲。
  9. 2031〜2032 予定
    軌道エネルギー低減
    ガニメデ接近を重ね、木星周回周期を短縮。
  10. 2032-07 予定
    エウロパ ×2
    活動域、組成、氷殻下、プラズマ環境を観測。
  11. 2032〜2033 予定
    カリスト反復接近
    観測と同時に木星周回軌道の傾斜を最大約35°へ上げる。
  12. 2033〜2034 予定
    ガニメデ遷移
    ガニメデとカリストの接近で捕獲条件を整える。
  13. 2034-12 予定
    ガニメデ周回投入
    外惑星の衛星を周回する初の宇宙機となる計画。
  14. 2035 予定
    高度200 km軌道
    高分解能撮像、地球物理、その場観測を実施。
  15. 2035-09 予定
    計画終端
    ガニメデ表面への計画衝突で運用を終える。

03エピソード

航路と観測能力を守った判断を、出来事を直接確認できる資料とともにたどる。

数mmの拘束を、振動・熱・衝撃の順で外す

2023年4月14日の打上げ後、ESAが16 mのRIMEレーダーアンテナを展開すると、一本の拘束ピンが数mm戻らず、三週間以上片側が止まった。氷殻下を最大約9 kmまで探る主装置だけに、強く引けば機構を壊す。このため運用班はスラスタで揺らし、機体を太陽へ向けて金具を温め、5月12日に非爆発式アクチュエータの衝撃を加えた。その結果ピンが外れ、全長16 mが完全展開。弱い刺激から段階的に試した判断が観測能力を回復させた。

月で加速し、24時間後の地球で4.8 km/s減速する

2024年8月19日23時15分CEST、JUICEは月を通過して太陽相対速度を0.9 km/s増し、約24時間後の20日23時56分には地球へ接近した。世界初の月・地球連続重力アシストは、一方の誤差が次の接近へ伝わるため、ESAが17〜22日に24時間体制で追跡した。地球を高度6,840 kmで通過すると速度は4.8 km/s下がり、進路は計100°曲がった。推進剤100〜150 kgを節約しながら金星へ向かい、木星到着後の追加観測余力を守った。

2億km先へ七度指令を送り、16か月周期の不具合を特定する

2025年7月16日04時50分CEST、ESAのセブレロス局は金星接近中のJUICEを捕捉できず、機体のテレメトリが途絶えた。約2億 km先では片道11分かかり、状態を確認できないまま送る指令は六回失敗したが、ESOCとAirbusは14日後の自動再起動を待たず約20時間試行を継続した。七回目の指令で信号増幅器を起動し、通信を回復。原因は16か月ごとにゼロへ戻るタイマーと増幅器制御が重なるソフトウェア不具合で、8月31日の金星フライバイ準備を再開できた。

04軌道・遷移

地球出発から木星到着までの太陽中心航路、月・地球の連続接近、35回の氷衛星フライバイを使う木星系ツアー、ガニメデ周回軌道への段階投入を四つの座標系でたどる。距離と時間は圧縮し、天体の遭遇順、進行方向、完了済みと計画中の区別を示す。

JUICEの太陽中心巡航、月・地球連続重力アシスト、木星系ツアー、ガニメデ周回 上段左は地球出発から金星、二回の地球フライバイ、木星到着まで。上段右は月と地球を約24時間で連続通過した重力アシスト。左下はガニメデ12回、カリスト21回、エウロパ2回の接近が木星周回周期と傾斜を変え、ガニメデ捕獲条件を整える順序。右下はガニメデを焦点に置く捕獲楕円から高度5,000 km、500 km、200 kmの観測軌道を経て計画衝突へ至る段階を示す。距離と時間は圧縮している。 JUICE · 遭遇順と航路の変化 · 情報基準 2026-08-21 遭遇順を表示 · 距離と時間は圧縮 A · 太陽中心の巡航 実線=完了 · 破線=計画 金星軌道の目安地球軌道の目安木星 太陽 2023年 · 打上げ2024年 · 月・地球連続接近2025年 · 金星 · 完了2026-09-28 · 次の接近2029-01-17 · 地球2031年7月 · 木星ガニメデ接近 → 木星周回投入 B · 月・地球連続重力アシスト2024-08-19 / 20 高度750 km · +0.9 km/s地球高度6,840 km · −4.8 km/s進行方向を合計約100°変更月→約24時間→地球。二つの接近を一続きに実行。 C · 木星系ツアーの役割と順序全35回 · ガニメデ12 / カリスト21 / エウロパ2 木星 エウロパ · 2回活動域と氷殻を近接観測ガニメデ · 12回周期短縮と捕獲条件を調整カリスト · 21回軌道傾斜を最大約35°へ 太陽中心巡航から木星中心の運動へ引き継ぐガニメデ接近 → 約13時間 → 木星周回投入(Δv 約1 km/s)木星周回投入噴射 2031〜2032軌道周期を短縮ガニメデ接近を反復2032年7月エウロパ2回近接科学を優先2032〜2033カリスト高緯度期木星極域を観測2033〜2034ガニメデ遷移周回投入条件を整える D · ガニメデ周回への段階投入2034年12月以降の計画 1 · 捕獲楕円2 · 高度5,000 km円軌道3 · 第2楕円軌道4 · 高度500 km円軌道5 · 高度200 km円軌道6 · 2035年 計画終端 ガニメデ(楕円の焦点) 近点・遠点で噴射し、観測高度を段階的に下げる 低高度観測後、ガニメデ表面への計画衝突で運用終了。
  1. 01地球出発2023-04-14 · Ariane 5で太陽周回へ。
  2. 02月・地球連続重力アシスト2024-08-19/20 · 月から約24時間後に地球へ。完了。
  3. 03金星フライバイ2025-08-31 · 完了。HGAを熱シールドとして運用。
  4. 042026年地球フライバイ2026-09-28予定 · 高度8,640 km。
  5. 052029年地球フライバイ2029-01-17予定 · 木星会合軌道へ。
  6. 06木星周回投入2031-07予定 · ガニメデ接近の約13時間後に約1 km/s減速。
  7. 07軌道エネルギー低減2031〜2032予定 · ガニメデ接近で木星周回周期を短縮。
  8. 08エウロパ2回接近2032-07予定 · 氷殻、組成、活動域を近距離観測。
  9. 09カリスト高緯度期2032〜2033予定 · 木星周回軌道の傾斜を最大約35°へ。
  10. 10ガニメデ遷移2033〜2034予定 · ガニメデとカリストで捕獲条件を整える。
  11. 11ガニメデ周回2034-12以降 · 捕獲楕円から高度5,000 km、500 km、200 kmへ移り、計画衝突で終了。

0510機器・主要サブシステム

氷殻、表面、内部、磁場、粒子、電波を同じ時刻・座標へ重ねる観測系。

JANUS

光学カメラ

地形・地質・全球地図と局所高解像度像を取得。

MAJIS

可視・赤外撮像分光器

氷、有機物、鉱物と希薄大気の組成を測る。

UVS

紫外分光器

外気圏、オーロラ、表面紫外特性を観測。

SWI

サブミリ波観測

木星成層圏と氷衛星外気圏の温度・組成・風を測る。

GALA

ガニメデ・レーザー高度計

地形と潮汐変形から氷殻・内部海を制約。

RIME

氷貫通レーダー

16 mダイポール、9 MHzで氷殻下最大約9 kmを探査。

J-MAG

磁力計

10.6 mブーム上で固有磁場と誘導磁場を分離。

PEP

粒子環境パッケージ

中性粒子・イオン・電子と氷衛星表面の相互作用を測る。

RPWI

電波・プラズマ波動

電場、磁場、プラズマ波動と電波放射を測る。

3GM

重力・地球物理

X/Ka帯追跡と超安定発振器で重力場・潮汐・大気を測る。

RADEM

放射線環境モニター

電子・陽子・重イオン線量を測り、機器運用と解析を支える。

HGA / AOCS

通信・姿勢・推進

2.5 m X/Ka帯HGA、三軸姿勢制御、主エンジンと10スラスタを統合。

06内部設計・システム構成

大型太陽電池で得た電力を10機器へ配り、観測データを地球へ送り、金星の熱と木星の放射線に耐える。機体上の配置と、電力・データ・姿勢制御のつながりを示す。

JUICEの機体配置と電力・データ・姿勢制御の流れ 中央にJUICEの機体、左右に二翼10枚の太陽電池、上に高利得アンテナ、横方向にRIMEアンテナ、斜め上に磁力計と電波観測用ブームを配置する。機体内部の電力調整、データ管理、姿勢制御、遮蔽箱と、10機器の三つの観測系を色分けした線で結ぶ。 JUICE · 機体配置と主要な機能経路10機器 · 二翼10枚 · 三軸姿勢制御 熱・放射線への備え金星:HGAを遮熱板として使用木星:MLI・ヒーター・放熱器放射線:遮蔽箱2基+RADEM温度と線量を監視し、機器を保護 通信・姿勢・推進HGA 2.5 m · X / Ka帯星追跡器・ジャイロ・ホイール主エンジン+スラスタ10基月接近では自律航法カメラも使用 HGA · 高利得アンテナ 2.5 m観測データ送信・3GM電波観測 J-MAG・RPWI10.6 mブーム RIME · 16 mダイポール2023-05-12 完全展開 左翼5枚右翼5枚 · 合計85 m² · 木星で約820 W JUICE 機体本体打上げ質量 約6,000 kg · 三軸安定PCDU電力調整・分配DMSデータ管理AOCS姿勢・軌道制御遮蔽箱 ×2放射線から保護 主エンジン 発電 → 電力分配記録 → 地球へ送信姿勢・軌道制御 → 推進 遠隔観測 · 4機器JANUS · MAJIS · UVS · SWI画像・分光・大気を遠方から観測観測値 → DMSへ記録地球物理 · 3機器GALA · RIME · 3GM地形・氷殻・重力・潮汐を測定時刻・姿勢・電波リンクを共有その場観測 · 3機器J-MAG · PEP · RPWI磁場・粒子・プラズマ波を測定ブーム配置で機体ノイズを低減 主要機器の配置と、電力・データ・姿勢制御の流れを示す。
太陽光・電力・熱データ・通信姿勢・軌道制御遠隔観測その場観測

図中の略語

PCDU (Power Conditioning and Distribution Unit)
太陽電池と蓄電池の電力を調整し、各機器へ分配する装置。
DMS (Data Management System)
観測値、時刻、姿勢、機体状態を記録し、送信順を管理するデータ管理系。
AOCS (Attitude and Orbit Control System)
機体の向きと軌道を推定し、ホイールやスラスタへ指令する姿勢・軌道制御系。
HGA (High-Gain Antenna)
地球との長距離通信に使う直径2.5 mの高利得アンテナ。
RIME (Radar for Icy Moons Exploration)
氷衛星の表面下を探る、全長16 mの氷衛星探査レーダー。
J-MAG / RPWI
磁場と電波・プラズマ波を測る機器。機体の影響を抑えるためブーム上に配置する。
MLI (Multi-Layer Insulation)
機体の熱の出入りを抑える多層断熱材。
NEA (Non-Explosive Actuator)
火薬を使わずに機構を解放する非爆発式アクチュエータ。

RIMEアンテナを完全展開するまで

  1. 01拘束を検知一本のピンが数mm戻らず、片側の展開が停止。
  2. 02スラスタで加振まず小さな振動を与え、機構を傷めずに解放を試す。
  3. 03太陽で加熱機体姿勢を変え、金具を温めて動きやすくする。
  4. 04NEAの衝撃で解放16 mを完全展開し、受信感度が30 dB向上。

姿勢と一体で管理する電力

二翼10枚、合計85 m²の太陽電池は木星到着末期でも約820 Wを供給する設計。発電面を太陽へ向ける制約は、HGA通信、観測視線、放熱面、姿勢制御と同じ時間割で解く。

10機器のデータをHGAへ集約

10機器の観測を時刻・姿勢・較正情報とともにDMSへ記録し、2.5 m HGAのX/Ka帯で地球へ送る。3GMは同じ電波リンクを重力・潮汐・大気の測定にも使う。

金星の熱と木星の放射線に備える

放射線に敏感な電子機器を二つの遮蔽箱へ収め、RADEMで実線量を監視する。熱設計は金星近傍の過熱と木星圏の低温をまたぎ、HGA遮熱、MLI、ヒーター、放熱器を運用モードと結ぶ。

RIME展開が回復した観測感度

拘束ピンの数mmの固着を、スラスタ加振、太陽加熱、最後にNEAの衝撃で解放。16 m展開後に受信感度が30 dB(1000倍)上がり、氷殻下探査に必要な性能を確保した。

08ESA一次資料

本ページで参照したESAの資料と、航路・機体・観測計画をさらに詳しく知るための文献を紹介する。