// Jupiter orbiter and atmospheric probe · NASA / JPL · 1989-084B
ガリレオ探査機
GALILEO
ガリレオは、木星を初めて長期周回したNASAの探査機。木星大気へプローブを送り、エウロパの地下海、イオの火山活動、巨大磁気圏を、通過ではなく滞在で調べた。
01基本情報
木星周回機と大気突入プローブを組み合わせ、木星と主要衛星を長期観測した大型惑星探査機。
| 開発・運用 | NASA / Jet Propulsion Laboratory |
|---|---|
| 打上げ | 1989年10月18日 Space Shuttle Atlantis / IUS |
| 木星到着 | 1995年12月7日 周回軌道投入・プローブ突入 |
| 状態 | 成功・運用終了 2003年9月に木星大気へ突入 |
| 種類 | 木星周回機 / 大気プローブ |
|---|---|
| 対象 | 木星、イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト、磁気圏 |
| 電源 | RTG |
| 国際標識番号 | 1989-084B |
02ミッション
ガリレオは、木星を一瞬のフライバイ対象から、衛星群を含む惑星系として長期観測する対象へ変えた。
木星に「住み込む」初の探査
パイオニアやボイジャーは木星を通過して大きな成果を得たが、ガリレオは木星を周回した。衛星フライバイを繰り返し、軌道を変え、同じ天体を別の条件で観測できるようになった。NASAは、ガリレオを木星を周回した最初の探査機として紹介している。
大気プローブを木星へ落とす
到着時、ガリレオのプローブは木星大気へ突入し、雲、風、組成、圧力、温度を直接測った。巨大惑星の大気は遠隔観測だけでは分からない。プローブは短時間で失われるが、その間に得る現場データは非常に濃い。
エウロパが海の世界になった
ガリレオはエウロパ表面のひび割れた氷地形や磁場データから、地下に液体の海がある可能性を強めた。後のEuropa ClipperやJUICEへ続く、氷衛星探査の大きな出発点になった。
故障したアンテナで、なお運用する
ガリレオは高利得アンテナの展開に失敗し、予定どおりの高速通信ができなくなった。それでも低利得アンテナ、データ圧縮、観測計画の工夫で大量の科学成果を返した。探査機運用の粘りが、ミッションの価値を救った例である。
木星系を34周する実験室
ガリレオは木星周回軌道に入った後、ミッション全体で34周回し、イオ7回、エウロパ11回、ガニメデ8回、カリスト8回、アマルテア1回の主要衛星フライバイを行った。衛星の重力を使って次のフライバイ条件を作り、木星磁気圏の中で同じ世界を何度も違う角度から調べた。
木星へ行くまでにも発見があった
打上げ後すぐ木星へ直行したわけではない。金星、地球、地球の順に重力アシストを受けるVEEGA航路を使い、その途中で小惑星GaspraとIdaを観測した。Idaでは衛星Dactylが見つかり、小惑星にも衛星があることを実画像で示した。目的地へ向かう航路そのものが、すでに太陽系探査になっていた。
- 1989-10-18打上げスペースシャトルAtlantisから放出。
- 1990-02-10金星フライバイ高度約16,000 kmで通過し、木星へ向かうための重力アシストを開始。
- 1990-12-08地球フライバイ1回目高度約960 kmで地球を通過し、航路を調整。
- 1991-10-29Gaspraフライバイ小惑星を初めて近接撮像した探査機になる。
- 1992-12-08地球フライバイ2回目高度約303 kmで通過し、木星へ向かう最終的なエネルギーを得る。
- 1993-08-28IdaとDactyl小惑星Idaを観測し、後に衛星Dactylが確認される。
- 1994-07SL9衝突を観測木星へ向かう途中、Shoemaker-Levy 9の衝突を直接観測。
- 1995-12-07木星到着周回軌道投入と大気プローブ突入を同日に実施。
- 1997-12主ミッション完了2年間の木星系調査を終え、延長ミッションへ入る。
- 2003-09-21木星へ突入衛星汚染を避けるため意図的に大気へ突入。
03エピソード
開かなかった大アンテナ、木星へ飛び込むprobe、磁場で読む海、汚染を避ける終端が一つの探査を形づくった。
100,000 bit/sの傘が開かず、10 bit/sを1〜2 kbit/sへ救う
1991年4月11日、直径4.8 m・18本リブのhigh-gain antennaは3分以内に開くはずが途中で止まり、摩擦で3本ほどのリブが固着したと判断された。予定通信速度は100,000 bit/s超だったのにlow-gain antennaは約10 bit/sしかない。NASA・JPLは1993〜1996年に圧縮と搭載softwareを書き換え、Goldstone、Canberra、Parkesの受信を束ねて実効1〜2 kbit/sを確保した。物理的な傘を直せなくても地上系と情報量を再設計し、木星の画像と観測値を回収した。
170,000 km/hで木星へ入り、58分で23気圧まで送る
1995年12月7日、Galileo atmospheric probeは母船から切り離されたまま木星大気へ約170,000 km/hで突入した。地球から即時制御できず、heat shieldで減速してparachuteを開き、温度・圧力・組成・風を自律測定して上空のorbiterへ送る一回限りの実験だった。probeは58分間、設計要求の二倍を超える約23気圧まで通信し、水が予想より少なく風が深部まで続く局地大気を記録した後、高温高圧で送信を終えた。
氷だけでは作れない0.06 S/mが、Europaの海を示す
GalileoのEuropa接近では、木星磁場の変化に同期して衛星側にも誘導磁場が現れた。氷殻だけでは必要な電流を流せないため、magnetometer teamは2000年までの近接データを、表面下に導電層がある物理問題として解析した。Europaを200 km未満で通過した測定は導電率0.06 S/m超を要求し、数km規模の塩水層なら説明できた。カメラで直接見えない海を、時間変化する磁場への応答から推定し、Europaを生命探査の主要標的へ変えた。
燃料が尽きる前に、Europaではなく木星へ落とす
木星圏を約8年調べたGalileoは推進剤が乏しくなり、姿勢と軌道を将来まで制御できなくなった。放置すれば地球由来の微生物を持つ機体が、地下海の可能性を持つEuropaへ偶然衝突する危険がある。NASA・JPLは残る推進能力を追加観測よりplanetary protectionへ割り当て、2003年9月21日に木星大気へ意図的に突入させた。探査機を守るのではなく科学対象を守る判断で、14年の飛行を確実な終端へ導いた。
04軌道
地球から金星へ内向きに出て、地球を2回使うVEEGA航路で木星へ。到着前に大気プローブと周回機へ分かれ、周回機は木星に捕獲された後、衛星の重力で軌道を組み替えながら34周した。距離・天体サイズ・飛行時間は模式化。
一次資料: NASA VEEGA・到着史 / NASA Galileo mission / JPL プローブ分離
05搭載機器
固体撮像カメラ
イオの噴火、エウロパの氷地形、衛星表面をCCDで高解像度撮像した。
赤外分光・放射計
NIMSは組成を多波長で地図化し、PPRは熱放射・反射光・偏光を測った。
紫外分光
木星大気、イオのガス、衛星周辺の希薄な大気と磁気圏発光を調べた。
磁場・プラズマ波
11 mブーム先端のMAGとPWSで磁場・電磁波を測り、ガニメデ固有磁場やエウロパ誘導磁場を捉えた。
荷電粒子
低エネルギープラズマから高エネルギー粒子まで測り、衛星と木星磁気圏の相互作用を追った。
ダスト・重イオン
DDSは微粒子、HICは放射線環境の重イオンを測定。回転部で周囲を掃く設計だった。
プローブ中継
固定指向のRadio Relay Hardwareが降下プローブの信号を受け、周回機に記録した。
大気プローブ計測
温度・圧力・減速度、組成、ヘリウム量に加え、雲・放射・雷・風を58分間直接測定した。
06設計
回り続けて場と粒子を測るローターと、対象を見据えるデスパン部を一機に同居させたデュアルスピン探査機。長いブーム、2基のRTG、大気プローブまで機体の外形から読む。
一次資料: NASA 機体・観測装置 / JPL Galileo設計報告
機体を二つの回転系に分ける
| 機体 | 打上げ時2,223 kg / 全高5.3 m / MAGブーム11 m |
|---|---|
| 電源 | RTG 2基 / 打上げ時約570 W |
| ローター | 約3 rpmで回転。RTG、推進、計算機、MAG・PLS・EPD・DDSなど |
| デスパン部 | 逆回転して空間に固定。SSI・NIMS・UVS・PPRとプローブ中継 |
| 姿勢基準 | 回転部のスタースキャナ、デスパン部のジャイロ、太陽センサー |
| 機動時 | 両部を固定し全体スピン。400 N噴射時は10 rpm |
壊れた通信路をシステムで補う
| 故障 | 4.8 m高利得アンテナが完全展開せず |
|---|---|
| 宇宙機側 | テープ記録、データ編集、画像圧縮、低利得S帯送信 |
| 地上側 | Deep Space Networkのアンテナ合成・受信改良 |
| 運用 | 接近時に記録し、軌道の残り時間で少しずつ地球へ送る |
回る観測装置と、見据える観測装置を分担する
ガリレオは、機体の大部分を約3 rpmで回すローターと、電動のスピン軸受で逆回転させて宇宙空間に対し静止させるデスパン部を組み合わせた。MAG、PLS、PWS、EPD、DDSなどは回転を利用して周囲の場と粒子を走査し、SSI、NIMS、UVS、PPRはデスパン部の走査台から衛星表面を狙う。ローターのスタースキャナが方位と回転を測り、デスパン側のジャイロが精密な旋回と指向を支えた。単なる安定化方式ではなく、観測装置ごとの「動きたい/止まりたい」を機体構造にした設計である。
高利得アンテナの代わりに、記録・圧縮・地上受信を作り直す
4.8 m高利得アンテナが完全展開しなかったため、木星からの科学データは低利得S帯アンテナで送らざるを得なかった。そこで衛星接近中のデータをテープレコーダへ集め、搭載計算機で選別・圧縮し、接近後の長い軌道区間を使って少しずつ送った。地上ではDeep Space Networkの複数アンテナを組み合わせ、符号化と受信処理も改良した。通信機単体の代替ではなく、「観測 → 記録 → 圧縮 → 低利得送信 → 地上復号」という経路全体を再設計して科学を救った。
推進系は捕獲と34周の形を作る
推進モジュールはMMH燃料と四酸化二窒素酸化剤を使う400 N主エンジン1基と、10 Nスラスタ12基を備えた。1995年12月7日、周回機はプローブ信号の中継を終えた後、主エンジンを49分間噴射して木星へ捕獲された。その後はスラスタで指向と軌道を微調整し、ガニメデ、カリスト、エウロパなどの重力アシストで次の衛星遭遇を組み立てた。推進剤だけで34周すべてを作るのではなく、衛星群を航法の一部として使った。
大気プローブは、母機と分かれて初めて完成する
円錐形プローブは1995年7月13日、木星から約8000万 kmの地点で分離された。周回機は2週間後に400 N主エンジンで進路をずらし、自分は大気へ落ちずにプローブの信号を受ける幾何へ移った。12月7日、プローブは秒速47.6 kmで大気に入り、ASI、NMS、HAD、NFR、NEP、LRDなどで構造、組成、ヘリウム量、放射、雲、雷・風を58分間測った。プローブだけでは地球へ届かず、周回機のRadio Relay Hardwareが受信・記録して初めて一つの観測系になる。
RTGと終端処分までが木星機の設計
太陽光の弱い木星で、2基のRTGが電力を供給した。磁力計を機体の磁気雑音から遠ざける11 mブーム、強い放射線下での復旧運用、プローブ分離時の10 rpm全体スピンも、長期滞在に必要な工夫だった。最後は推進剤が尽きて制御不能になる前に木星衝突軌道へ入れ、地下海の可能性があるエウロパを汚染しないよう2003年9月21日に大気へ突入した。機体の終わらせ方も、ガリレオ自身の発見に応じて決まったシステム設計である。
07写真・図版
実機、木星系での運用、終端突入を公式画像で見る。



08関連文献
- Dactylの発見と物理特性
- Ida-Dactyl系の密度推定
- ガニメデ固有磁場の発見
- エウロパ地下海の磁場証拠
- 地球を生命惑星として検出する試験